軍事用半導体技術に関して言えば、実は、東芝の軍事用半導体部門は東芝本体に残されているのだが、それはほとんど報じられない。さらに、軍事専用でなくても、軍事転用されかねない部品や技術については、政府の許可なしでは海外輸出できないようにする「外為法(がいためほう)」という法律もあるので、外資に買われたから即アウトということではない。

 ただ、経産省は、軍事転用の可能性のある技術の流出を防止するために、外為法上の審査を厳格に行う姿勢を見せて海外勢をけん制し始めた。

 特に注目されるのは、世耕弘成経産相が、今国会で外為法改正が行われれば、危ないと判断した外国企業による買収の場合は、その外国企業に対して「株式の売却命令などを『事後的に』できるようにもなる」とわざわざ述べたことだ。

 明らかに、外国企業に対して、日の丸連合を邪魔すると、後で手痛いしっぺ返しに遭うぞという警告を発していると読み取れる。

 このように、日の丸連合構想への経産省の執念深さは、尋常ではないものがある。

 しかし、経産省は、日本の電機産業を壊滅状態に導いた貧乏神だということを忘れてはならない。

 日本の経済にとって、もちろん、東芝メモリは大事な宝であることは間違いない。

 それをさらに成長させることは、日本経済全体の利益になることも明らかだ。

 しかし、経産省は、それと同時に、まったく異なる彼ら自身の利益をも追求している。

 経産省から見れば、仮にこのプロジェクトが成功しなくても、とりあえず、政府の金を投入し続けて、その間、東芝メモリを同省の植民地、つまり、天下り機関とすることができれば、十分元が取れるということになる。

 そして、これは、常人にはなかなか理解できないことなのだが、経産官僚に脈々と受け継がれるDNAが彼らを突き動かす本能というものがある。

「最も優秀な我々が牛耳ることによってのみ、日本の産業は繁栄することができる」ということを実感したい。それこそ、経産官僚になった醍醐味なのである。

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