働いて得たお金でモノやサービスが買われたり、銀行はそのお金を預かったりしている。社会全体で、お金はどのように流れているのか、見てみよう。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、公立鳥取環境大学准教授の泉美智子さん監修の解説を紹介しよう。

■銀行はお金を社会にめぐらせる心臓

 いろいろなモノやサービスが生み出され、消費される一連の流れを「経済」という。お金は「経済の血液」といわれているよ。人間の体は、血液がサラサラと流れているから元気でいられる。経済が元気であるためには、お金の流れがスムーズでなくてはいけないんだ。

 お金という血液を元気にめぐらせる心臓の役割を果たしているのが銀行だ。銀行は、会社や家庭などから預かったお金を、資金が必要な会社などに融資する(貸す)。借りた会社などは、それを元に利益(もうけ)を出し、利子をつけて銀行に返す。銀行は、お金を預かった先には利子をつけて返す。個人が、例えば家など高い買い物をしたいときには、銀行からお金を借りて支払い、利子を足しながら少しずつ返していく。

 こんなふうに、銀行を通してお金がぐるぐる回っているから、経済が活発になり、私たちはさまざまなモノを買ったり、サービスを受けたりすることができるんだよ。

■日銀は景気をコントロール

 お金の流れがよくなり、商品がよく売れて、もうけが増え、物価(モノの値段)が上がる状態を「好景気」、その逆を「不景気」という。二つは互いに繰り返すけれど、好景気なら物価が上がり続けるインフレーション(インフレ)が、不景気なら物価が下がり続けるデフレーション(デフレ)が起きて、会社が倒産することもある。

 そこで大切な役割を果たすのが日本銀行(日銀)だ。日銀は、銀行から預かるお金の利子(金利)などで景気をコントロールする。インフレのときに金利を上げると、銀行は日銀にお金をたくさん預けるので、人々は銀行からお金を借りにくくなって、お金の流れが悪くなる。デフレのときに金利を下げると、逆の理由で、人々はお金を借りやすくなってお金の流れがよくなると期待されるんだ。昨年は、デフレが解消しないので、日本史上初めてマイナス金利にして話題になったね。

 こんなふうに、景気や物価を安定させる日銀の役割を「金融政策」というよ。

【モノの値段はどう決まる?】
 モノの値段は、つくったり運んだりするのにかかるコストのほか、売り手と買い手の気持ちによっても変わるんだ。モノを売り買いするとき、売る(供給)側は、できるだけ高く売ろうとする。買う(需要)側は、できるだけ安く買おうとする。両者の気持ちは、下のようなグラフで表され、この二つのバランスが取れたところで、モノの値段は決まる。ただし、このグラフの曲線は、さまざまな原因で変化するよ。例えば、「高くても買いたい」と思う人が多いと、「需要」の曲線が右にずれ、値段は上がるんだ。

【キーワード:マイナス金利】
 日銀が銀行からお金を預かる金利をマイナスにすること。お金を預けると、普通なら利子がついて増えるはずなのに、利子がマイナス、つまり預けたお金が減ってしまう。これなら、銀行は日銀にお金を預けず、会社などに貸し出すようになり、景気がよくなるだろうと期待された。ところが、導入してから1年たっても大きな効果は出ていない。

(監修/公立鳥取環境大学准教授・泉美智子)

※月刊ジュニアエラ 2017年4月号より

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AERA dot.編集部
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