初の世界戦が決まり、記者会見に臨む村田諒太(c)朝日新聞社
初の世界戦が決まり、記者会見に臨む村田諒太(c)朝日新聞社

「プロでの12戦では村田諒太はほとんど試されてこなかった。しかし、経験豊富なアッサン・エンダムとの対戦でそれは変わる」
 
 5月20日、有明コロシアムで開催されるエンダム対村田のWBA世界ミドル級王座決定戦に関し、スポーツ専門サイト「ESPN.com」はそう記していた。その言葉通り、今回のタイトル戦は村田にとってもちろん“勝負の一戦”であり、同時に“世界レベルでのテストマッチ”の趣があるのだろう。

 村田が対戦する33歳のエンダムはカメルーン出身、フランスに本拠地を置くボクサータイプのベテラン選手である。戦績は35勝(21KO)2敗。元WBO世界ミドル級王者という肩書きが示す通り、広く名前を知られた強豪ボクサーであることは間違いない。

 この階級ではゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)、ダニエル・ジェイコブス(アメリカ)といった大物が頂点に君臨しているのだから、この試合は“世界一のミドル級ファイターを決める一戦”とは言えない。ただ、統括団体や王者の種類(暫定王者、正規王者、スーパー王者など)が増えた現代のボクシング界では、世界戦がテストマッチの様相を呈することは珍しい話ではない。そして、エンダムとの一戦が、村田の実力が世界レベルかどうかを分かり易い形で示してくれるファイトになることは間違いあるまい。

 歴戦の強者を相手に、日本が誇るロンドン五輪の「金メダリスト」に勝機はあるのか。ESPN.comの報道通り、プロ入り後の村田は強豪との対戦が少ないだけに、展開、結果予想は極めて難しい。

 エンダムは2012年10月12日にはブルックリンにあるバークレイズセンターという大舞台に登場し、ピーター・クイリン(アメリカ)に6度のダウンを奪われて判定負け。また、2015年6月20日にはカナダの人気者デビッド・レミューに4度も倒されたうえでの判定負けだった。

 まるで起き上がり小法師のように倒され続けたイメージが強烈で、打たれ脆いという印象のファンも多いだろう。ただ、両戦とも何度ダウンしてもそのたびに立ち上がったことを留意すべき。クイリン戦では107-115が3人、レミュー戦では109-115が2人、110-114が1人という最終的な採点が示す通り、実はダウンしなかった多くのラウンドをエンダムが奪ってもいるのだ。

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