小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』で連載中の「プリンス堀潤のそもそもキーワード」。今回は「クラウドファンディング」について一緒に考えます。

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 何か新しいことにチャレンジしたい! 世の中をあっと驚かせるおもしろい発明を思いついた! 困っている人たちを助けるための会社や団体を立ち上げたい! でも困ったことに、お金がない……。そんなとき、あなたならどうしますか?

 すばらしいアイデアがあっても、それを実行したり、開発したりするための資金が集まらなくて、苦労するというのが今までの常識でした。貯金がたくさんあったり、銀行や投資家が気前よくお金を貸してくれたりすればいいのですが、なかなかそうはいかないのが世の中の厳しさ。ところが、この数年間で「お金集め」の手法に大きな変化が起きています。社会を前進させる可能性を秘めたアイデアとお金を結びつける新たなしくみ、それが「クラウドファンディング」です。

「クラウド」を日本語に訳すと「群衆」、「ファンディング」は「資金調達」という意味です。広範囲の人々がそれぞれお金を持ちよって、そのアイデアがきちんと実行されるようにインターネット経由でお金を投じていくしくみです。

 例えば、ある個人が「新しいスマートフォンを開発したいので、制作費用として500万円を集めたい」と、完成品のデザインや事業計画をインターネット上で公開したとします。それを見て「ぜひ実現してほしい」と思った一般の人が、1万円や10万円といった額をクレジットカードや電子マネーで支払うというものです。

 2010年に入ってからアメリカを中心に世界各地でクラウドファンディングのサイトが急速に広まっていきました。アイデアの種類もさまざまで、画期的な新製品や映画、音楽などのものづくり系、大学での研究費用、地域おこし、災害の復興支援、スポーツ選手の育成費用など多岐にわたります。

 日本でも次々と、新しいクラウドファンディングサイトが立ち上がって、その数は100以上。投じた金額に応じて物がもらえたり、サービスが受けられたりする「購入型」のクラウドファンディングや、見返りを必要とせず、応援の気持ちを込めた「寄付型」などさまざまです。

 昨年から大きな話題を呼んでいる、戦時中の人々の暮らしを描いたアニメ映画「この世界の片隅に」は、クラウドファンディングで制作費用の一部が賄われました。支援者にはお礼として映画のエンドロールに名前が掲載されました。

 寄付型では、昨年4月に発生した熊本地震の復興を支援する目的で立ち上がった「Yahoo!基金」の緊急支援募金に5億円近くが集まり、参加者は57万人を超えました。(ジャーナリスト・堀潤)

※月刊ジュニアエラ 2017年4月号より

ジュニアエラ 2017年 04 月号 [雑誌]

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AERA dot.編集部
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