一方、岩隈が所属するマリナーズは、ドジャースのように地区内で大本命というわけではない。一般的にはア・リーグ西地区でアストロズ、レンジャーズに次ぐダークホース的な位置づけ。それでもスポーツ・イラストレイテッド誌電子版の予想企画では、8記者のうちの2人が地区優勝、4人がワイルドカードを獲得すると見るなど、2001年以来のプレーオフ進出を予想する声は少なくない。

 ロビンソン・カノー、ネルソン・クルーズ、カイル・シーガーの30発トリオを軸に、打線は強力。そこに去年は33盗塁のジーン・セグラ、30盗塁のジャロッド・ダイソンが新たに加わり、相手投手には余計に厄介なチームとなった。

 そんなマリナーズにとって、不安材料は大黒柱フェリックス・フェルナンデスの力に陰りが見られること。長く“球界のエース”であり続けてきたキング・フェリックスだが、一昨年は防御率3.53、昨年は同3.82と成績は下降傾向。30歳の右腕がさらに疲れを見せるようなら、マリナーズは厳しくなる。そのときには、36歳の岩隈に科せられる比重は余計に大きくなるのだろう。

 ややオフェンス偏重のチームが勝ち進むには、岩隈を含む先発陣の頑張りが不可欠。そういった意味で、いきなり地区ライバルのアストロズと対戦する開幕シリーズは試金石となる。青木宣親でもレギュラーが保障されないほど層が厚いアストロズを相手に、岩隈はどんなピッチングで今季をスタートするのか。年齢による衰えを見せず、老練な投球術で打者を煙に負けるか。

 まだ序盤戦などと言うことなかれ。4月16日までアストロズと7戦、レンジャーズと3戦、エンジェルスと3戦と、マリナーズはいきなり地区ライバルとばかり対戦する。この開幕直後のプレー内容から、優勝候補か、ダークホース止まりか、今季のマリナーズの真価がうっすらと見えてくるかもしれない。(文・杉浦大介)