ベスト4最後のイスを勝ち取った大阪桐蔭(大阪)は2年生中心の若いチームだが、その潜在能力の高さは間違いなく大会でもナンバーワンだ。先頭を打つ藤原恭大はここまで2安打と当たりは出ていないが、初戦ではいきなりツーベース、2回戦ではヒットと盗塁といずれも初回に大量点を奪う足掛かりを作っている。内野手、外野手、投手の三役をこなす根尾昂、そしてここまで8安打6打点と大当たりの山田健太も2年生だ。山本ダンテ武蔵、背番号3ながら抜群の強肩と俊足を見せている福井章吾など3年生ももちろんプレーのレベルは高い。不安はエースの徳山壮磨へのここまでの負担が大きいこと。初戦は7回を投げて降板したが、2回戦では2回からリリーフで登板し準々決勝も完投で133球を投げている。香川麗爾と横川凱は静岡戦で打ちこまれているが、能力は高い投手だけに彼らの出来が準決勝のカギとなりそうだ。

 4校の内訳を地域別に見ると近畿勢が3校と九州勢が1校となった。秀岳館も昨年ほどではないもののベンチ入り18人のうち6人が近畿地区出身の選手である。大阪桐蔭は根尾など5人が近畿地区以外出身だが、履正社と報徳学園は全員が近畿の中学チーム出身の選手達だ。今大会ベスト8に躍進した盛岡大付もレギュラーの3人が大阪出身だった。過去10年間(07年~16年)の春夏の甲子園での勝利数を都道府県別で見ても大阪桐蔭と履正社を擁する大阪が1位の49勝をあげており、2位の沖縄の31勝を大きく引き離している。また兵庫も今回勝ち残っている報徳学園などが結果を残しており25勝で4位タイにつけている(3位は神奈川で30勝)。このことから見ても今大会の結果を見ても、全国の地域差は小さくなったとは言っても、高校野球は大阪、兵庫などの近畿を中心に回っていることがよく分かるだろう。

 今回勝ち残った4校の比較となると、戦力の厚さという点ではやはり履正社と大阪桐蔭に分があるように見えるが、いずれもここまでの戦いでエースへの負担が大きいというのが気がかりである。報徳学園、秀岳館は序盤にリードする展開に持ち込んで、上手く継投で逃げ切るというのが理想だろう。前評判通り履正社が押し切るのか、報徳学園が永田監督の有終の美を飾るのか、秀岳館が三度目の正直を果たすか、大阪桐蔭の若さが爆発するのか、いずれにしても残すは二日。甲子園から目を離すことはできない。(文・西尾典文)