「(こういう試合は)内容より結果。勝ち点3は大きい。勝ちきることでチームは力をつけていくはず」

 左サイドバックに入った長友佑都はやはり、勝利を強調した。それは正論だろう。もっとも、彼自身がこの試合に満足しているわけではない。

<この試合内容で世界に打って出たら、一敗地にまみれる>

 経験のある選手たちは、十分に予測できている。勝つには勝ったが、というジレンマが滲み出る。連戦で疲労がたまっていたことは否めないが(原口元気は守備面で力を使い果たし、久保も60分を過ぎるとパワーダウン)、W杯本大会ではこうした日程は十分に想定できる。

「ハイレベルな相手だったら、この内容では躓く」

 ハリルホジッチは警鐘を鳴らしたが、それは彼自身のマネジメントへの警告でもあるべきだろう。ボランチの選択は正しかったのか?「ジョーカー」として呼んだ宇佐美貴史は完全に不発だった。

 日本は6月7日に国内でシリアと親善試合を行った後、同13日、イラクとW杯予選出場に向けた正念場を戦う。

小宮良之
1972年生まれ。スポーツライター。01~06年までバルセロナを拠点に活動、帰国後は戦うアスリートの実像に迫る。代表作に「導かれし者」(角川文庫)、「アンチ・ドロップアウト」3部作(集英社)、「おれは最後に笑う」(東邦出版)など。3月にシリーズ第6弾となる「選ばれし者への挑戦状」(東邦出版)を刊行。