今野に長谷部の代わりができた、と短絡的に考えるべきではない。戦術的な視点で見た場合、昨年10月のオーストラリア戦の前半のほうが、明らかに精度は高かった。引き分けたことで、批判を受けたに過ぎない。

「勝てば官軍、負ければ賊軍」

 その感覚だけでは、本質を見誤る。

 ハリルJAPANは劇的に強くなったわけではない。着実に戦術を浸透させ、戦いのバリエーションも見せた、というのが事実だろう。その進化型が世界で勝ち抜けるか、はこれからの話だ。

 3月28日、日本はグループ首位を懸けてタイを迎え撃つ。今野、高萩洋次郎がケガで戦線を離脱。代わりに招集された遠藤航は、バランス感覚は長谷部と似た特性も持つが、技量も経験も及ばない。

 ハリルホジッチはどのような布陣を選択するのか。質は下がっても、4-2-3-1に戻す公算は高いが――。その采配が注目される。

小宮良之
1972年生まれ。スポーツライター。01~06年までバルセロナを拠点に活動、帰国後は戦うアスリートの実像に迫る。代表作に「導かれし者」(角川文庫)、「アンチ・ドロップアウト」3部作(集英社)、「おれは最後に笑う」(東邦出版)など。3月にシリーズ第6弾となる「選ばれし者への挑戦状」(東邦出版)を刊行。