他チームを圧倒する戦力の中で、唯一、絶対的な選手がいないのが捕手だ。インサイドワークに定評のあった細川が戦力外となり、ベテランの鶴岡慎也、中堅の高谷裕亮、元ドラ1で期待の高い山下斐紹の争いの中に、育成出身の甲斐拓也が割り込んできた。レギュラー捕手の確立は、圧倒的戦力を誇るチームの数少ない課題となっている。

 他球団の戦力と比較しても、ほとんど死角の見当たらないチーム力を誇るが、今季はスター選手が揃うゆえの不安もある。4年に一度行われるWBCに、大量の選手が出場したことだ。侍ジャパンには千賀、松田、内川が選ばれ、オランダ代表としてバンデンハーク、キューバ代表でデスパイネが出場した。セットアッパーとして期待されたスアレスは、ベネズエラ代表でWBCの試合中に故障し、開幕は絶望的な状況となっている。故障はなくとも、例年よりも仕上げが早くなり、大会では過大なプレッシャーを受けるWBC出場は、ペナントレースに与える影響は大きいことがこれまでの歴史で証明されている。今回は世界一奪還を期して大会に挑んだ侍ジャパンだが、結果は準決勝敗退に終わった。試合での高いテンションと盛り上がりを考えると、肝心のシーズンが始まる前に、一種の「燃え尽き症候群」のような状態になっても不思議はない。

 少々の離脱者ではチーム力が落ちない圧倒的な戦力に加えて、選手には昨季味わった屈辱へのリベンジの気持ちが強い。戦力的に見ても、今季のパ・リーグは、昨季に歴史的逆転劇を喫した北海道日本ハムとの一騎打ちの様相が強いが、優勝候補の筆頭のチームがライバルではなく、「WBCの後遺症」という目に見えない、内なる敵に足をすくわれる可能性もあるかもしれない。