“下剋上の機運”をはねのけ3回戦を突破した錦織圭。悲願のマスターズ制覇は叶うか。(写真:Getty Images)
“下剋上の機運”をはねのけ3回戦を突破した錦織圭。悲願のマスターズ制覇は叶うか。(写真:Getty Images)

 現地時間3月26日に行われたマイアミ・マスターズ3回戦での2時間44分のマラソンマッチは、見る者にとっては心休まらぬ接戦だったが、本人にしてみれば、ある程度想定内だったのかもしれない。

「けっこう、心の準備はしていました。爆発すると強い選手なので油断はできないですし、負ける可能性も十分あるので、心して掛かっていたのはありました」

 対戦相手のフェルナンド・ベルダスコへの敬意も込めながら、錦織圭は、試合に挑む際の心持ちを振り返った。第2セットで握ったマッチポイントを逃し、ファイナルセットにもつれ込みながらも、最後は振り切った勝利後のことである。

 「ATPマスターズ1000」のタイトル獲得は、錦織が2年越しで掲げてきた目標である。昨年は2大会で決勝まで勝ち進むも、最後の一歩が届かなかった。それら頂上決戦で涙を飲んだ相手はいずれもノバク・ジョコビッチであり、そのうちの決勝1試合は、ここマイアミでの出来事だ。それから1年後の今年、ジョコビッチは負傷を理由に欠場し、昨年末にそのジョコビッチから世界1位の座を奪ったアンディ・マリーも、肘の故障のために不在。その帰結として、世界4位の錦織に与えられた今大会の地位は第2シード。単純に数字上で言えば、決勝までは自分より上位の選手と当たらないドローである。

 数字はあくまで一つの指標でしかないことは、錦織本人が誰より強く実感している。「シードは関係ないです。上が抜けただけだし、実力的には、まだまだかなと思うので気にしてないです」今の地位を冷静に受け止めつつ、彼はテニス界の現状を踏まえた上で、こう続けた。

「上2人が居ないのは珍しいし、多少なりともチャンスはチャンス。ですが実際に、先週(インディアンウェルズ・マスターズ)は、(ロジャー)フェデラーと(スタン)ワウリンカの決勝だった。若い選手も上がってきて、ランキングは関係なくなってもきている」

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