ところが、その長谷部のUAE戦の欠場が決定した。所属クラブの試合でクリアした際にポストに直撃。膝を縫ったが、経過が思わしくなく、手術が必要になったという。

 代役候補は今野泰幸(ガンバ大阪)、もしくは高萩洋次郎(FC東京)になるが、戦力ダウンは避けられない。

 今野は2年ぶりの選出になるが、長谷部よりも、もう一人のボランチである山口蛍(セレッソ大阪)に近いタイプだろう。インターセプトが得意で、アグレッシブな攻守が持ち味。熱くなりすぎる傾向もあり、長谷部のように冷静にプレーを読む力は備えていない。

 一方、高萩は長谷部と性質の似た選手で、バランスをとるセンスに長ける。高さもあり、体格にも恵まれる。だが、試合経験も、代表での実績も、そしてチームを動かす力も、長谷部には及ばない。しかも、負傷によりUAE戦は出場すら危うい状態だという。

 ハリルホジッチは窮地に立たされている。長谷部の欠場で、計算は立たない。同じような戦い方を選択するだろうが、90分間の中では未知数だ。

「アウェイで勝利を持ち帰るために、野心的に準備しています」

 指揮官はそう言うが、その目的を遂げられるのか?

 ハリルJAPAN、未曾有の危機と言える。

小宮良之
1972年生まれ。スポーツライター。01~06年までバルセロナを拠点に活動、帰国後は戦うアスリートの実像に迫る。代表作に「導かれし者」(角川文庫)、「アンチ・ドロップアウト」3部作(集英社)、「おれは最後に笑う」(東邦出版)など。3月にシリーズ第6弾となる「選ばれし者への挑戦状」(東邦出版)を刊行。