BNPパリバ・オープン準々決勝でソックに敗れた錦織圭(写真:Getty Images)
BNPパリバ・オープン準々決勝でソックに敗れた錦織圭(写真:Getty Images)

「この2大会が大切」と本人も強調した北米マスターズ2大会の一つである、カリフォルニア州インディアンウェルズ開催の“BNPパリバ・マスターズ”――。

 初戦からベスト8進出までの3試合を全てストレートで快勝した錦織圭に、不安要素はまるでなかった。かつては手を焼いた、砂漠の町特有の跳ねるボールにも試合を重ねるごとに適応し、サーブも大会を通じて好調。マスターズ優勝を今季の目標の一つに掲げる彼は、2年連続のベスト8にも「一瞬嬉しいくらい」と満足する様子はなく、「体力は凄く残っているので、集中力も持続すると思う」と、その先に続く厳しい戦いに自信をのぞかせていた。

 しかしベスト4進出をかけた準々決勝では、地元アメリカの期待を背負うジャック・ソックに3-6,6-2,2-6で競り負ける。警戒していた高く跳ねるキック・サーブ、そして強烈なスピンを掛けたソックの重いフォアハンドストロークを、最後まで攻略しきれなかった末の敗戦だった。

 試合中にやや肘を気にする仕草を見せた錦織ではあるが、彼の周辺からは、フィジカル面やテニスの状態そのものを危惧する声はない。当の本人も「今大会は、凄く調子が良かった」と言い、敗因を「風に対応できなかったり、彼のプレーに対応できなかったり、試合中に改善できなかったのが理由」と簡潔に説明した。「リターンのポジションを変えたり、揺さぶりをかけたり……もう少し試行錯誤すれば可能性はあったかもしれない」との言葉からは、勝利に必要なカードは全て手元に揃っていたにも関わらず、それらを正しいタイミングで切ることが出来なかった、もどかしさがにじみ出た。

 1年間の30週間ほどを“遠征”に費やし、飛行機での移動を繰り返しながら70~90試合を戦うトップテニス選手たちにとって、常に高いモチベーションを保ちコートに立つのが如何に困難か、そして旅を中心とした競技生活と私生活の両立がどれほど難しいか……それは錦織のみならず、今季のアンディ・マリーとノバク・ジョコビッチの姿が明瞭に物語ってもいる。

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