――日本から米軍がいなくなると困るの?

大島:人によって考えは異なるけれど、戦後、長い間、日米が協力して続けてきた安全保障体制を一から見直すことになるんだ。だから、いきなり撤退すると言われても困るよね。

――どうして日本に米軍がいるの?

大島:戦後、日本が独立を回復するにあたって、アメリカと日米安全保障条約を結んだからだ。トランプ大統領は「日本の防衛のために」米軍を置いていると主張しているけれど、歴代の大統領だって「アメリカのために」なるから、日本に米軍基地を置いてきたんだ。東アジアににらみをきかせることができるからね。

――(小声で)トランプ大統領はよくわかっていないのかな?

大島:たぶんね。日本が在日米軍の駐留経費をどれだけ払っているかも知らないみたいだ。経費の約75%は日本が払っているんだよ。これは他国と比べても、とても高い比率なんだ。

――ちゃんと知ってほしいね。

大島:そうだね。トランプ大統領は実業家から大統領になったから、なんでも「取引」で考える。これまでの大統領と全然違うことをやろうとしているのはたしかだ。だから世界の枠組みや日米関係が変わる可能性はおおいにあるよ。アメリカは自由、民主主義、人権といった原則を世界で掲げてきたけど、変わらないか気になるね。

――心配だなぁ。

大島:これまでは、すごく力の強いボス・アメリカが、よくも悪くも、世界のルールを決めてきた。それで安定が保たれてきた。これからは各国の人がもっと自立して、どんな社会にしたいか、どんなふうに生きたいかを、自分たちで考えなければいけない時代になったといえるかもしれないね。

【キーワード】
<日米安全保障条約>
米軍基地を日本国内に置くことを認める代わりに、万が一、他国が日本を攻撃した場合、日米が共同して日本を守ることを定めた条約。1951年、日本が独立を回復する際、サンフランシスコ平和条約とともに結ばれた。

(監修/朝日新聞社「GLOBE」副編集長・大島隆)

※月刊ジュニアエラ 2017年3月号より

ジュニアエラ 2017年 03 月号 [雑誌]

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AERA dot.編集部
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