高梨とは逆に、笑ってW杯フィニッシュとなったのが伊藤。「すごく歴史があるジャンプ台ですし、すごくジャンプ台も格好いいので、すごく楽しみに来ていたところで勝つことができて、初優勝と同じかそれ以上にうれしかった」と、“すごく”喜んだ。

 17勝に出場して5勝、表彰台にも11回上がった。そして世界選手権では2大会連続の銀メダルとなり、「(今季は)思い描いていたようなジャンプに近づくことが少しでもできたと思う。春からずっと世界選手権を目指す年にしたいと言っていて、そこで自分の調子のピークを持っていくこともできた」。

 飛躍のシーズンを過ごし、高梨のライバルと目されるようになったが「私は世界選手権を目指して調整してきた感じですけど、高梨選手は1シーズンを通して高い技術をキープし続けている。私にはすごく難しいことで、課題でもあるのでそこはすごいなと思う」と言う。それでも、2014年1月から高梨が6連勝と無敵を誇ってきた札幌開催のW杯で勝った強さは本物のはず。そんな伊藤を、所属先の葛西紀明(土屋ホーム)選手兼任監督も熱烈に祝福。女子最終戦の後に行われた男子個人戦では「もう何だろうね、うれしすぎて。最後もやってくれるだろうと信じていて。ホテルでちょうど2本目を見て絶叫しました!」と大興奮だった。

 ブログでは「姫」と呼んでかわいがっている伊藤の急成長は「あれぐらいまではいつかはいけると思っていたんですけど、今シーズンあそこまでいくと思わなかった」と、期待を上回る速さだったよう。

「僕と一緒に早起きしてランニングしてイメトレしてきたので、そういうのも効いたんじゃないかな」と、さりげないアピールも欠かさなかった葛西選手兼任監督によると、男子と同じジャンプができるように、瞬発系やパワーを鍛えるメニューをチームの男子選手とは別に取り組んだことも実になったという。

 勝っても勝っても満足せず「男子と一緒に試合ができるレベルを目指している」と言ってきた高梨とは、突き詰めるジャンプに共通するところがあり、来季も2人が女子ジャンプを引っ張りそうだ。(文・小林幸帆)