初場所で白鵬と鶴竜を破った関脇高安が関脇以下では一番の実力者だが、稀勢の里と同じ田子ノ浦部屋なので、残念ながら4横綱総なめの可能性はない。期待がかかるのは、初場所新関脇で勝ち越した玉鷲、小結に並んだ御嶽海と正代の学生相撲出身コンビか。平幕では、初場所白鵬を破って殊勲賞の貴ノ岩や、技能賞の蒼国来もおもしろい存在だ。そして、大関の座から陥落し、1場所での復帰を狙う関脇琴奨菊は、初優勝した昨年初場所にはこの4人を総なめしており(稀勢の里は当時大関)、快挙を成し遂げる力は十分にある。

 過去、関脇以下では4横綱すべてに勝った力士はいないが、大関なら2例ある。1949年夏場所の佐賀ノ花と1956年春場所の若ノ花(のち横綱初代若乃花)だ。春場所、それに続く3人目となる可能性があるのが豪栄道(照ノ富士は日馬富士と同じ伊勢ケ浜部屋で対戦なし)。全勝優勝した昨年秋場所には、休場した白鵬を除く3人(稀勢の里は当時大関)に勝っている。過去に4横綱を総なめした2人は、いずれも優勝はできず、佐賀ノ花にいたっては7勝8敗と負け越している。大阪出身の豪栄道が史上初の4横綱総なめ+優勝という快挙を成し遂げれば、春場所の行われる大阪は大いに盛り上がることだろう。

 大阪出身力士といえば注目されるのは新入幕の宇良だ。初場所では、十両以上では1955年の決まり手制定以来初となる「たすき反り」の珍手を決めるなど、超個性的な「アクロバット相撲」で人気急上昇中。地元の大声援を受けて快進撃を続ければ、大阪はお祭り騒ぎとなるに違いない。

 新たな4横綱時代の幕開けとなる春場所は、見どころがいっぱいだ。(文・十枝慶二)