稀勢の里と並ぶ優勝候補は、やはり白鵬だろう。最近4場所、優勝から遠ざかっているとはいえ、史上1位の優勝37回の経験値は圧倒的だ。相撲の幅が広く、相手に応じて完成度の高い技を次々と繰り出し、白星をつかむ取り口は芸術的で、稀勢の里とは対照的な魅力がある。そんな両者はこれまでも数々の名勝負を繰り広げてきた。幕内での対戦成績は白鵬が43勝16敗とリード。特に、優勝のかかった一番はことごとくものにしてきた。初場所は白鵬が敗れたとはいえ、稀勢の里の優勝が決まった後。ともに優勝がかかった一番では、まだ負けたことがない。これからも厚い壁として稀勢の里の前に立ちはだかることができるか。春場所の対戦が試金石となるかもしれない。

 稀勢の里にとって白鵬以上に苦手意識が強いと思われるのが日馬富士だ。対戦成績は日馬富士が36勝24敗とリードし、10連勝したこともある。この1年間も3勝2敗。抜群のスピードで先手を取り、攻め続けて勝利をつかむのがパターンだ。初場所、途中休場の原因となった右足太ももの回復具合が気がかりだが、序盤で取りこぼしがなく波に乗れば、有力な優勝候補となる。4横綱に休場がない場合、稀勢の里と顔が合うのは千秋楽と予想される。そこで互いに優勝をかける展開ならば、日馬富士有利といえるかもしれない。

 鶴竜は、これまで稀勢の里戦で17勝31敗とリードを許している。ただし、過去には7連敗するなど苦手だったのが、最近1年間は2勝2敗、3年間では8勝7敗と五分の戦いを繰り広げるようになった。相撲のうまい鶴竜は右四つが得意だが左四つでも取れ、稀勢の里に上手を与えずに攻め切ることも多い。日馬富士と同様、初場所は途中休場したが、場所後の大相撲トーナメントには出場するなど回復は順調のようだ。

 新横綱稀勢の里がモンゴル3横綱どうわたり合うか。春場所の最大の見どころだ。

 4横綱時代は、下位力士にとってみれば、横綱を倒すチャンスが増える「下剋上の時代」でもある。ただし、過去の記録をひもとくと、関脇以下の力士が4横綱すべてに勝った例はない。ぜひとも、史上初の快挙を狙ってほしい。

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