北舟岡(北海道・JR室蘭本線)
北舟岡(北海道・JR室蘭本線)
有家駅(岩手県・JR八戸線)
有家駅(岩手県・JR八戸線)
大三東駅(長崎県・島原鉄道)
大三東駅(長崎県・島原鉄道)
池の浦シーサイド駅(三重県・JR参宮線)
池の浦シーサイド駅(三重県・JR参宮線)
田井ノ浜駅(徳島県・JR牟岐線)
田井ノ浜駅(徳島県・JR牟岐線)

 なぜ、海の見える無人駅というのは、鉄道ファンならず多くの旅人を魅了するのか――。

 絶景、旅情、開放感、郷愁……。たとえば、海が見える駅として有名なところでは、北浜駅(北海道・釧網本線)や驫木駅(青森県・五能線)、青海川駅(新潟県・信越本線)、下灘駅(愛媛県・予讃線)などが思い浮かぶ。

 ホームに降り立って、ぼんやりと海を眺める。レトロな駅舎やベンチをめでる。駅前の浜辺に下りて、まぶしい景色を胸いっぱいに吸い込む。もう、それだけで「自分の感覚」を取り戻せたような、幸せな気持ちになってくる。

 そんな「海の見える無人駅」だけを集めた紀行本『海駅図鑑 海の見える無人駅』の著者である清水浩史氏に、「海駅ベスト3」を教えてもらった。

■北舟岡(北海道・JR室蘭本線)
 まずは、北舟岡駅(きたふなおかえき)。ホームの先は、真っ青な空と内浦湾。海側のホームに立ってみると、視界を遮るものは何もない。まるで海に浮かんでいるような感覚になる。空と海しか見えない開放感は、海駅の中でも突出している。海をはさんで遠くに見える、広い裾野の駒ケ岳(1131メートル)も美しい。

■有家駅(岩手県・JR八戸線)
 つづいては、有家駅(うげえき)。ホームの目の前に広がる海岸は、真っ白な砂浜が延々とつづく、極上のビーチ。有家集落は、陸側に500メートルほど離れているため、駅の周辺は海以外は何もない。絶景を前にすると、そんな寂寥(せきりょう)感までもが心地いい。東日本大震災で駅は大きな被害を受けたが、待合室は新しく建て替えられ、津波の際の緊急階段も設けられている。待合室の大きな窓からも、海を広く見渡せる。

■大三東駅(長崎県・島原鉄道)
 そして最後に、大三東駅(おおみさきえき)を挙げたい。海側ホームの目の前は、干潟が広がる海。有明海は干満差が日本一大きいため、訪れる時間帯によって海の表情は大きく変化する。ホームには、海岸との間に壁もフェンスも設けられておらず、開放感バツグンの海駅。ホームから護岸を伝って、簡単に浜辺に降り立つこともできる。

 さらに変わり種の海駅として、「幻の海駅」も見逃せない。それは、普段は行くことができない臨時駅だ。臨時駅とは、年に限られた日数しか営業しない駅のこと。

■池の浦シーサイド駅(三重県・JR参宮線)
 池の浦シーサイド駅は、1年の営業日数は夏季のたった4日間(2016年)に限られる。しかも、1日上下各2本の列車しか止まらない。かつては海水浴客や行楽客でにぎわっていたが、年々営業日数は減少し、今や風前のともしびのよう。そんな蜃気楼(しんきろう)のようなはかなさゆえに、多くの鉄道ファンを惹きつける。美しい海水浴場は、駅から歩いて15分ほどのところにある。

■田井ノ浜駅(徳島県・JR牟岐線)
 田井ノ浜駅も、夏季のみの臨時駅で昨年実績は23日間の営業。海水浴場はすぐ目の前で、徒歩0分で駅と直結している。白砂と水の透明度が美しい、極上の海水浴場。1日上下各4本が停車するので(2016年)、比較的利用しやすい。

 もうすぐ年度末。別れと出会いの季節。そんな転機に、なぜか人は旅に出たくなる。これまでのこと、これからのことに思いを巡らしながら――。

 この春、海の見える無人駅があなたを待っています。