1年半ぶりの初戦敗退を喫した錦織圭。次戦でショックを取り払えるか(写真:Getty Images)
1年半ぶりの初戦敗退を喫した錦織圭。次戦でショックを取り払えるか(写真:Getty Images)

「ケイ・ニシコリがリオ・オープン初戦で驚きの敗退」

「トップシードのニシコリ、怒りにかられ初戦で不覚」

 リオ・オープンの1回戦で錦織圭が破れた時、その試合はアメリカの全国紙『USA TODAY』や、英国の『インディペンデント』紙の電子版でも、ニュースとして報じられた。

「ラケットの破壊も、流れを変える要因にはならなかった」の記述や、「こんなに自分への怒りをあらわにするのは珍しいのでは?」との記者の問いに対する、「恐らく、キャリアで一番(苛立ちを見せた)だと思う」などのやりとりを記した記事もある。

 錦織の1回戦での戦いや結果が、国際的にもこのように大きな記事になるのは珍しい。換言すれば、これは今の彼が初戦で敗れるということが、それほどに珍しい事件だということだ。何しろ錦織がトーナメントの初戦で破れるのは、2015年の全米オープン以来の珍事。ちなみに、約1年半もの期間初戦敗と無縁というのは、他のトッププレーヤーと比べても特筆すべき戦績だ。

 現在錦織よりランキングが上位の選手を見てみても、ミロシュ・ラオニッチは昨年10月、スタン・ワウリンカも11月に初戦敗退(1回戦シード免除の2回戦も含む)を喫している。それどころか、昨年の前半戦で圧倒的な強さを誇ったノバク・ジョコビッチですら、4月のモンテカルロ・マスターズの初戦(初戦免除の2回戦)で、当時55位のイジ・ベセリーに負けているのだ。1年以上に渡って初戦敗退がないというのは、やはり2015年8月が最後である世界1位のアンディ・マリーに比肩する数字。それほどまでに、ここ数年の錦織の安定感は抜きん出ていた。

 もっとも、今回の出来事がちょっとした事件であるだけに、この敗戦が彼に与える心理的なダメージも大きいだろう。

 過去の彼がどうであったか……という実例も1年半前の全米後にまで遡ることになるが、その時の彼は「自分でもびっくりするほど落ち込んだ。練習にも行きたくない。3日くらいは何もせず、部屋から出るのも嫌だった」という数日間を過ごす。敗戦の2日後に拠点のIMGアカデミーに戻ってきた時には、人もまばらなコートを見渡し、「なんで俺は、ここに居るんだろう……」と茫然とした。この時の彼にとって、初戦敗退は約1年ぶりの出来事。

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