手術しなかった理由として、若年者は「肝機能条件」「腫瘍条件」という肝がんそのものが多いのに対し、高齢者は「患者希望」「併存疾患」が多い。

 高齢者への手術では、肝がんそのものよりもそれ以外のリスクに注意を払う必要があるようだ。最近気になる術後合併症として、國土医師は誤嚥を挙げる。

「術後の嚥下がうまくいかなくなる高齢者がいます。しばらく食べられなくなると、嚥下に必要な筋肉の機能が落ちてくるためか、誤嚥しやすくなるようです。術前に嚥下訓練をおこないますが、術後も誤嚥性肺炎などに注意しなければなりません」

 では、同院の高齢者に対する、手術すべきかどうかの判断基準はどうなっているか。

▼年齢は目安▼本人の意思(認知症なし)▼ADL(日常生活動作)がどこまで可能か▼合併症の有無▼家族のサポートがあるか、といった観点で、総合的に判断しているという。

「判断に迷う場合は、検査という名目で入院してもらって、看護チームに様子を見てもらい報告してもらいます。身の回りのことは自分でできるか、家族はちゃんとサポートしているかといった点をチェックします」(國土医師)

 手術数の少ない病院は、高齢者に対し、肝がんの手術そのものの難易度だけではなく、肺炎などの術後合併症のリスクも懸念し、「手術しない」あるいは「大病院に紹介する」という選択をする傾向にあるという。(医療健康編集部・杉村健)