津川友介/1980年生まれ。東北大学医学部卒。聖路加国際病院、ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカル・センター(ハーバード大学医学部病院)、世界銀行を経て現職。ハーバード公衆衛生大学院にてMPH(公衆衛生学修士号)、ハーバード大学で医療政策学のPh.D.取得。専門は医療政策学、医療経済学。共著『原因と結果の経済学』(ダイヤモンド社)が発売中
津川友介/1980年生まれ。東北大学医学部卒。聖路加国際病院、ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカル・センター(ハーバード大学医学部病院)、世界銀行を経て現職。ハーバード公衆衛生大学院にてMPH(公衆衛生学修士号)、ハーバード大学で医療政策学のPh.D.取得。専門は医療政策学、医療経済学。共著『原因と結果の経済学』(ダイヤモンド社)が発売中

 少子高齢化が進む日本で、今後、医療の現場はどう変わっていくのか。アエラムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる』では、ハーバード公衆衛生大学院リサーチアソシエイトの津川友介氏に、医学部を志望する学生に向けて「これから求められる医師像」を示してもらった。

*  *  *

 私は医療政策学者であるが、原点は「臨床医」にある。現在、医療政策・医療経済学の研究をしているのは、あくまで現場で働く医師、看護師、その他の医療関係者がスムーズに働くことができ、ひいては患者さんに最良の医療行為が施されることを望んでいるからである。医師や看護師が十分に機能していなければ患者さんに最良の医療を届けられないが、そのためには綿密にデザインされた「医療政策」が必要になってくる。

 私の考える「これから求められる医師像」は、以下の三つを兼ね備えた医師である。

(1)医師の仕事に意義、やりがいを感じられること
(2)生涯にわたり勉強を続け、医学だけでなく社会に関する幅広い知識を持つこと
(3)医療経済学を理解し、ムダのない医療行為を行うことができること

 一つずつ説明していこう。

 これから医師になろうとしている人たちに一番重要な資質は、こつこつと毎日、目の前の患者さんに医療ケアを施し続けることに意義ややりがいを感じられるかどうかであると私は考える。

■内科医での経験が私の原点

 医学部に進学し医師免許を取得することの第一の目的は「臨床医」になること。将来、基礎研究がしたいのであれば、博士号を取得して最先端の一流の研究に接したほうが、早く一人前の研究者になれるかもしれない。一方で、医療ビジネスがしたいのであれば、MBAやMHA(Master of Healthcare Administration)のように医療に特化したビジネススキルを身に着けたほうが有用だと思う。

 もちろん医師免許を持つことで、上記のような分野でも有利になるとも言えるが、本記事では、読者の医学部に入る目的が臨床医になることと想定し進めていく。

 私は医療政策の世界に入る前に6年間、内科医として働いていたし、今でも日本に帰った時には、できるだけ臨床医として働くようにしている。臨床現場での経験が、今でも私の原点である。医師は毎日新しい患者さんに接し、患者さんの健康に関する問題を解決していくのが仕事だ。決して派手な仕事ではなく、むしろ地味な仕事である。

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