いま、日本人がチベット自治区に入るには、許可証が必要になる。そしてその許可証は、ガイドという監視役をつけないと発給されない。僕は日本の代理店を通して、許可証をとっていた。

 香港人は身分証明書を提出するだけだった。僕はパスポートと許可証を出す。その照合に時間がかかる。

「問題なさそう?」

 隣に立つ香港人に聞いた。

「たぶん。でも、ほかのチベット人は時間がかかりそう。あんなに何枚も顔写真を撮る必要があるのかね。ここはチベット自治区だろ」

「妙な話さ。チベット人がチベット自治区の中心都市に簡単に入ることができない。身分証だけではだめなチベット人がいるらしい。漢民族は自由なんだけどね」

「どういうチベット人?」

「中国の公安がその区分けを公表すると思う?」

 たしかにそうだった。

 中国支配に対し、チベットの人々は激しく抵抗した。チベット動乱、そしてインド領内でのチベット亡命政府の樹立という歴史が刻まれている。

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