WBCに向け、ここまでの調整過程も順調だ。春季キャンプでは、5日に初めてブルペンで投球練習を行い、WBC公認球で31球を投げ、7日には同じく侍ジャパンに選出された小林誠司(巨人)を相手に、初めて捕手を座らせた状態で50球を投げた。

 滑りやすく、微妙な重量の違いなどから、日本人投手が苦労すると言われるWBC公式球も、菅野にとっては武器になる。シュートしながら沈むワンシームは、日本の公式球よりも変化が大きくなり、ウイニングショットとして使える球種となりそうだ。チェンジアップなども含めて、変化球の低めへの制球にも不安はない。

 体調面や技術面も含めて、侍ジャパンのエースの資格十分と言えそうな菅野だが、大谷の出場辞退は、やはり不安材料と言わざるを得ない。過去の大会を振り返ると、連覇を果たした第1回と第2回は、松坂大輔が2大会連続でMVPに選ばれているが、第1回は上原浩治(当時巨人)、第2回もダルビッシュ有(当時日本ハム)と、もう一人のスーパーエースの存在があった。準決勝で敗退し、3位となった前回大会でも田中(当時楽天)、前田(当時広島)と、現在はメジャーで活躍する2大エースが先発陣を支えた。今回は、その役割を大谷と菅野が担うはずだったが、その一角が出場辞退となったことは、やはり影響が大きい。日本中の注目を集める大会で「日の丸のエース」の重圧を1人で担うのは、相当な負担になることは間違いない。

 現在はコンディションも良好のようだが、昨シーズンは終盤に体調不良でクライマックスシリーズの登板を回避しており、11月に行われた侍ジャパン強化試合でも、代表に選ばれながら登板しなかったという経緯もある。菅野は、大会終了後に始まるペナントレースでも、2年連続でリーグ優勝を逃した巨人のエースとして、フル回転が期待されている。当然のことだが、WBCに全精力を注ぐわけにもいかない状況だ。
 
 過去の大会でしのぎを削った韓国も含めて、各国から「WBCで見るべきものがひとつ消滅した」とまで言われる大谷の欠場が、侍ジャパンに及ぼす影響は大きい。