■名古屋は都会すぎず田舎すぎず、がよい

 全国に22の校舎を構えるメディカルラボも、スタートは名古屋校だった。可児校舎長も、名古屋の住みやすさを理由に挙げる。

「講演で全国各地をまわっていますが、『医学部ならどこでもいい』という保護者が実は多いのです。でも、名古屋の保護者は違います。名古屋は都会すぎず、田舎すぎずで住みやすいからか地元志向が強いですね」

 名古屋を愛する意識は、医学部“愛”へとつながる。

 また、藤田保健衛生大の星長学長は、愛知県の医療のあり方も理由に挙げる。

「以前、救急車のたらいまわしがニュースになりましたが、本学の附属病院では、よほどの理由がない限り、救急車を断りません。県内では国立の名古屋大学医学部附属病院も含め、患者の立場に立った医療を実践しています。県民はそんな医療のあり方を見て、医師になりたい、子どもに医師になってほしい、と思うのではないでしょうか」

 消防庁によれば、救命救急センターにおける救急患者の受け入れ率(14年)は、愛知県は97.1%。一概に比較はできないが、東京都(76.9%)や大阪府(65.7%)などの都市圏より、救急車の受け入れ拒否が少ないことがわかる。実際、藤田保健衛生大学病院の救急車受け入れは、年間で8千件を超える。地域への「安心感」が、医学部“愛”を育んでいるのだ。(文/庄村敦子)

※アエラムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる』より