高齢化などのため手術件数が増え続ける中、全国的に麻酔科医は不足している。しかし、横浜市立大は若手麻酔科医の研究への意欲を大切にした。豊富なマンパワーで臨床を支え、研究する時間的余裕を捻出している。また、出身校がさまざまで学閥がないことも、研究を活性化させる大きな原動力のようだ。チームプレーの成果と言えよう。

「がむしゃらに臨床をし、研究をしたら1位になったという感じです。科研費をたくさん取ったら成果を出さなければなりません。医学、医療は公への貢献です。私たちは研究成果と人材養成の両方で社会に還元できるよう、努力を続けていきたいと思います」(後藤教授)

■異分野への強い関心、法医学研究の発展に

 和歌山県立医科大は、主に死因究明などに役立てられる法医学の分野に強い。法医学以外の最先端研究分野にアンテナを張りめぐらせていることが、研究成果に表れたようだ。同大法医学講座の近藤稔和教授が言う。

「たとえば、私たちはノーベル賞受賞の対象となったオートファジーを応用した研究を法医学に取り入れてきました。免疫分野での最先端研究も積極的に取り入れています。一方で、法医学はその時代を反映しており、社会全体の動きには常に着目しています。自殺、事故、大災害などで、死因の究明、身元確認などと関わってくるからです」

 近藤教授は、法医学において実務(解剖)、教育、研究は三位一体と考えている。研究テーマは「侵襲と生体反応」。解剖で遭遇するさまざまな死因を診断するために、外からの侵襲(傷ついた時、薬物を服用した時、心筋梗こう塞そくが発症した時)にどのような生体反応が起こるかについて最先端の研究を進めている。

 法医学はテレビドラマや小説のテーマになりやすく、受験生にもなじみのある言葉だろう。

「法医学は究極の総合医療であり、ここを発信源として医療の発展に寄与します。しかし、黒衣であって、警察の捜査のためだけにあるのではありません。亡くなった方の尊厳を守る、つまり、基本的な人権を守る最後の医療です」(近藤教授)

 医学部の大学選びでは、設置(国公立か私立)、難易度、大学所在地が基準になるが、もう少し踏み込んで大学の強い分野を見てみよう。大学への問い合わせ、オープンキャンパスで知ることができる。世界最先端分野で活躍できるかもしれない。(文/小林哲夫

※アエラムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる』より