今年の特別表彰の郷司裕氏はアマチュア球界で審判員を長く務めた人で、鈴木美嶺氏はプロ・アマ統一の公認野球規則の制定で中心的な役割を果たした人物だ。この特別表彰の歴代受賞者には、プロ野球の父と呼ばれた正力松太郎氏や、都市対抗野球を創設した橋戸信氏などがおり、02年と03年のみに実施された新世紀特別表彰者には、日本の野球創世記に熱心な選手だったと言われる文豪・正岡子規がいる。

 選出方法は、各表彰によって違いがあるが、基本的に投票によって決められる。2000安打や200勝など、単に記録、数字のみで入会資格が得られる名球会とは、本質的に違うものと言える。

 プレーヤー表彰が「野球報道に関して15年以上の経験を持つ委員(約300人)が投票し、75パーセント以上の得票」と、マスコミ関係者のみの投票によるものに対して、エキスパート表彰は「殿堂入りした人(約30名)、競技者表彰委員会の幹事と野球報道年数30年以上の経験を持つ委員(約70名)が投票し、75パーセント以上の得票」で、殿堂入りとなる。前述した権威、という意味では、毎年MVP投票などで、ウケ狙いなのか、とんでもない選手の名前が必ず見られる報道陣のみの投票よりも、実際の殿堂入りメンバーも投票するエキスパート部門の選出者(今年の2人を含めてこれまでに7名)の方が、むしろ権威は高いと言えるかもしれない。

 名球会との関係で言えば、2000本安打を記録した殿堂入り有資格者で、殿堂入りしていない主なOBは、土井正博(以下敬称略)、藤田平、谷沢健一、有藤通世、新井宏昌、柴田勲などがいる。また、2000本は達成していないが、巨人や日本代表の監督としても実績を残した原辰徳は、プレーヤー部門での資格はすでに失っており、あとはエキスパート部門での選出しかない。200勝を記録した殿堂入り有資格者で、殿堂入りしていないのは、今年、平松政次の受賞で、江夏豊だけになった。江夏は刑事事件を起こしたこともあり、プレーヤー部門での対象期間中は、候補にさえなっていなかった。同じ意味で、打者の清原和博が候補者資格を剥奪されてしまったのは、実績や人気を考えると、残念というしかない。