炊飯器はデザインの面でも試行錯誤がなされた。デザイン担当の高野潤さんによると「羽釜や土鍋のたたずまいを家電に取り入れたかった」とのことで、曲線にこだわった釜のようなデザインを採用。なめらかな曲線を描くために、かつて「アウディ」でカーデザインを務めた人に炊飯器のデザインを見てもらうこともした。「新しいことをすると、それはいずれ古くなってしまう」という考えのもと、決して新しくない、シンプルで主張しないデザインが完成した。

 一方、改めて行った炊飯器の開発では、米を煮たり、焼いたり、レンジにかけたりするなど、あらゆるアプローチが行われ、ひとつの方法にたどり着く。2015年に発売したトースター「BALMUDA The Toaster」では、蒸気を使いながらパンを焼きあげる独自の技術で大ヒットを収めたが、今回の炊飯器でもカギとなったのも「蒸気」だった。

 たどり着いたのは「蒸気炊飯」という方法だ。具体的には、釜を二重に重ねる構造になっていて、下の窯には水を入れ、その上に重ねる窯には水と米を入れる。スイッチを入れると、下の釜が徐々に加熱され、蒸気を生み出す。その蒸気の力で、上の釜に入っている米を炊き上げる、というものだ。

 寺尾社長が発表会で繰り返しアピールしていたのはご飯の特徴は「表面にはハリ、つやがありながら、中はふっくらしている」「べたつきがなく、ほぐれがいい」「自然なお米らしい味」といった点。特に「食感」には大きな自信があるようで、「卵かけご飯にすると特別の食感を味わえる」「カレーをかけると、米粒のひとつひとつと絡んでよく合う」と力説していた。

 その実力の程を、試食で体感してみた。

 試食会で用意されたのは、「BALMUDA The Gohan」で今まさに炊きあがったばかりのご飯。まずは白飯のままで食べて、米そのものの味を確かめる。食べたときにまず思ったのは、口の中でひとつひとつの粒の形をしっかり感じることができるという点。口に入れた瞬間にかたまりだったご飯がほぐれ、一粒一粒「立っている」という印象を覚える。これは普通の炊飯器とは明らかに違うとわかるものだった。社長が「ハリがある」と表現したように、口に含んだ時は若干固い印象を受けるが、もちろん中までしっかり炊けており、噛み応えがある。そして噛むごとに、自然なご飯の味を感じることができた。ご飯の炊き方は固めが好きだったり、柔らかめが好きだったりと好みがわかれるところだが、例え好みではなかったとしても、この独特の“粒感”は新鮮に感じられるはずだ。

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