●地獄で政務を司った清貧の神さま
あの世とこの世を行き来して、地獄の閻魔さまの補佐をしたとして知られる小野篁(おののたかむら)も、学問の神さまとして知られている。篁は道真よりも前に、実直さゆえに天皇の逆鱗に触れ流刑にあった人物であるが、政務能力・文才・書と並外れた才能を持っていたと伝わっている。京都の六道珍皇寺は、篁が地獄へ通ったと言われる井戸と、ほぼ等身大の篁像を見ることができる。
東京には、篁を主祭神に祀る「小野照崎神社」がある(相殿は菅原道真)。今に伝わる篁の性格からすれば、誠実で実直な人の願いごとなら叶えてくれるのかもしれない。
●八百万の神に知恵を授けた神
神話の世界にも学問の神さまがいる。天照大神(伊勢神宮の神)が天岩戸に隠れた時、八百万の神々に岩戸の外へ連れ出す知恵を授けたのが八意思兼命(やごころおもいかねのみこと)だ。あまりに古い神さまなので、全国でも有数の古社にしかいない。神話にしたがって「戸隠神社(中社)」にはもちろん、宮崎の高千穂にある「天安河原」(「天岩戸神社」境内)にも鎮座し、関東では古社中の古社、「秩父神社」の主祭神として祀られている。
●智恵授けの仏さまは
さて、最後に知恵を司る仏さまを紹介しておこう。関東ではあまり知られていないが、関西では七五三よりも重要視されている(七五三自体が徳川家康ゆかりのものだから当然かもしれないが)、「十三詣り」という行事がある。かぞえ13歳を迎えた子どもたちが、旧暦の3月13日前後に「虚空蔵菩薩」参りをするものだが、“智恵もらい”と言われ、中学受験と重なる現在では少し早めの参詣も増えているのだとか。
また、“三人寄れば文殊の知恵”ということわざからも分かるように「文殊菩薩」は“知恵授けの菩薩”と呼ばれている。前述の「虚空蔵菩薩」が記憶力をつける仏であるのに対し、「文殊菩薩」は判断力を授けるとも言われている。受験や学問の種類によってどちらの菩薩に祈願するのか選択するのもよいかもしれない。東京では浅草寺の影向堂にどちらの仏さまも鎮座している。
最近では、学問の神さまは子どもの受験対策だけでなく、大人の「ボケ防止」祈願にも頼りにされているという。また、菅原道真、小野篁などは無実の罪で迫害にあったことから、「冤罪(えんざい)を晴らす」「怨敵調伏」といった御利益もあるのだとか。学問の神さまは、親・子・爺婆、3代にわたって参拝するのに向いている場所なのかもしれない。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)