「層の厚いミドル級では挑戦することすらも難しい」。一部のメディアはそう伝えたがるが、実際には昨今のミドル級は完全に“トップヘビー(頂点の選手だけが頭抜けている)”。ゴロフキン、ジェイコブスといった人気選手が、大興行に起用できるだけの対戦相手を見つけるのも容易ではない状況が続いていた。

 そんな中で、元五輪金メダリスト、プロでも無敗レコードを保持し、世界的にリスペクトを集める本田明彦会長(帝拳ジム)にプロモートされる村田が、タイトル挑戦の機会を得られないとは考え難い。ロンドン五輪で名を売っただけに、特にイギリスでのサンダース挑戦は理に叶う。遅くともゴロフキンが全団体のタイトル統一後にスーパーミドル級に上がる頃には、空位になる王座決定戦の出場選手として声がかかるはずだ。

 日本のボクシングファンにとってのベストの流れは、やはり5月6日にカネロ対チャベスが決まることだろう。そうすれば、村田は相性的にも悪くなさそうなサンダースに挑戦できる。試合予想は決定後にしたいが、村田がイギリスで大番狂わせを起こせば、その先にはさらに大きな夢のような舞台が見えてくる。

 3月のジェイコブス戦(すでに決定済み)、9月に計画されるカネロとのスーパーファイトを下馬評通りにゴロフキンが制すれば、カザフスタンの怪物はミドル級での最後の仕事としてWBOタイトルに狙いを定めるはずだ。そのときに、もしも村田がWBO王座を保持していれば……。

 すべてがシナリオ通りなら、今年末以降、ゴロフキン対村田のミドル級世界4団体統一戦という日本ボクシング史上空前のスーパーファイトが実現することも考えられるのである。

 もちろん現時点では余りにも「If」が多すぎて、現実的には響いてこない。しかし、この初夢はもはや単なる絵空事ではなくなっているのも事実。そんなドリームプランに、2016年中に少しでも近づいていくことができるか。

 30歳を迎えた村田にとって、プロキャリアで最も重要な1年がいよいよ始まろうとしている。(文・杉浦大介)