残る2人はボランチ枠。1人は川崎Fの中村憲剛、もう1人は浦和の柏木陽介だ。年間勝ち点でトップの座を争った2強の「心臓」でもある。36歳と大ベテランの域にある中村だが、そのパフォーマンスは自ら「中村史上最高」と公言するほどの充実ぶり。今季のJ1最多得点を稼いだ川崎Fのアタッキングフットボールは、典雅なパスワークのハブとなる中村あってのシロモノだった。今季はボランチを担う大島僚太の飛躍的な成長もあり、2列目に入るケースが増えた結果、十八番のアシストに加えて9ゴールを量産。ケガに悩まされながらもピッチに立ったときの影響力は絶大だった。

 その中村に迫る存在感をみせた柏木は、ひと皮むけた印象だ。5得点8アシストと数字上では中村に劣るが、記録には残らない「アシストのアシスト」が少なくなかった。しかも、ボールがない時の働きも際立っていた。攻から守への高速転換と球際の激しさで、何度も反撃の芽を摘んでいる。今季、浦和が取り組んだカウンタープレスを象徴する存在だ。ファーストステージ第11節、アウェイで大宮を破った『さいたまダービー』における電光石火の決勝ゴールに柏木の新しい魅力が凝縮されていた。

 最後は【FW+トップ下】だ。2トップに鹿島の金崎夢生と川崎Fの小林悠、そして、トップ下に大宮の家長昭博という組み合わせ。金崎は年間10得点と、数字だけ見れば点取り屋としては物足りないが、鹿島のファーストステージ制覇の立役者である。12勝のうち、約半数の5試合で決勝点をたたき出した。無類の勝負強さはチャンピオンシップ(CS)でも実証済み。川崎Fとの準決勝も、浦和との決勝第2戦も、カタをつけたのはこの人だった。

 一方、小林は負傷のためポストシーズンこそ棒に振ったが、レギュラーシーズンでは大暴れ。15得点はチームメートの大久保嘉人と同じだが、先輩の3倍近い11アシストをマークしている。セカンドステージのゴールラッシュは神がかり的で、開幕戦から実に7戦連発。日本人の中で前線におけるプレゼンスは圧倒的なものだった。後半アディショナルタイムにもぎ取った横浜FM戦の決勝ゴールは、今季のJを湧かせた『等々力劇場』のハイライトだったといえよう。

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