この米ドル金利市場の根幹である債務返済の規範が、返すあてもないのにお金を借りてしまおうというトランプ大統領の登場で、大きく損なわれている可能性に直面していると塚口氏は警告している。

 みんなで協力しあってお金を貸し借りしあうことができる土壌には、「借りたものは返す」という国境を超えた共通認識があり、そうした信頼の上で成り立っているのが、国債市場をはじめとする国際金融システムだ。「借金を踏み倒す」ことを是とするような人間がアメリカ経済のトップにたったのではないかという疑念が市場を覆いつつあり、現に金利は世界中で上がり始めている。

 先に述べたように、実体経済の6.7倍ものマネーが流通している国際金融市場で、世界的かつ急激に金利が上昇することは、マーケットに大きなマグマ溜まりを生み、近い将来市場の地殻変動を引き起こすに違いない。

 このような状況下で、私たちはいったいどうすればよいのか?

 一つは、手元流動性を高めておくこと。つまり現預金を多く持っておく必要がある。マーケットに大きな揺らぎが生じたとき、資産が安く買えるチャンスも相応にやってくるためだ。そういったチャンスを手にするためにも、いつでも動かせる資金を持っておきたい。

 また塚口氏は、金融市場の激変を逆にリターンの源泉とする「ブラックスワン・ファンド」への投資も選択肢の一つとして挙げている。

 金融市場では想定外のショックを多く見かけることがあり、そうした事象を「ブラックスワン」と呼ぶ。かつて西欧ではすべての白鳥は白いと信じられていたが、欧州の探検家がオーストラリアで黒い白鳥(黒鳥)を発見したことから、その考えが間違っていたことが証明されたという逸話に由来している。2008年のリーマンショックや2015年のチャイナショックはまさにその典型だ。

「ブラックスワン・ファンド」には、統計学上で発生確率は低いものの、発生すると巨額の損失を招く可能性のある「テールリスク」を管理しようという試みで、例えば全保有資産の10%を投資のプロに任せ、オプション契約をはじめとする市場が混乱に陥った際に、値上がりする投機的商品に投資するファンドなどが該当する。

 あまりお目にかかれない金融商品だが、この激動の機会に探してみてもよいだろう。