会見がここまでぼけている原因のひとつは、その場に現場を知る人間がいなかったことだろう。MERY以外の9つのサイトを統括しており、もっとも現場に近い人物なのではとされる村田マリ氏(キュレーション企画統括部長、iemo代表取締役CEO)は、この日の会見には欠席した。守安氏は「ここまで大きく社会的にお騒がせする問題になりましたので、今回、会社のトップである私が出るべきだと思った」と話し、村田氏欠席の理由について「一部、健康的な問題も絡んでいるということです」と説明。「守安社長が、会見に出るのを止めているのでは」と追及されると「ありません」と一蹴した。

 問題をネットニュースで知った人間が会見をしても、それ以上の情報が出ないというのは、あるいは当然なのかもしれない。
 
 また、著作者への対応も十分なものとはいえない。DeNAは記事内容に関して相談を受け付ける「相談窓口」を開設しており、会見でも「受け付けたお問い合わせには真摯に対応してまいります」(守安氏)としていた。しかし、サイトの記事はすべて非公開になっており、著作権を侵害されているかどうか調べる術がない。著作権侵害を受けた可能性があるライターやカメラマンから「問い合わせていただければ、調査できる状態にはあります」(守安氏)と話すが、果たして記事や写真を盗用された確証のない人が、自ら問い合わせをするだろうか。仮にしたとしても、そういった人の数が膨大になった時に、対応しきれるかは疑問が残る。

 さらに、守安社長は自身の進退についての質問に「企業としての信頼を回復するために全力を尽くすことが私の責務」「挽回してもう一度立て直すのが責務だと思います」と繰り返し、報道陣からの「やめるつもりはないということですか」という直球の質問に対しても「やめるつもりはありません」と即答。この問題を受けて守安社長は月額報酬の30%を6ヵ月間減額することを発表しているが、問題の全貌がはっきりしない今、それが妥当であるのかもわからない。

 今回の問題の原因究明については「第三者委員会を設置して調査を行う。調査が終わり次第、内容を公開する」としているが、調査の期間については「時期についてはお答えすることが難しいです。時期を急ぐより、しっかり中に踏み込んで期間をしっかりもうけたいと考えています」(小林氏)と話すにとどまった。

 あらゆることがぼやけたまま、という印象を受けた今回の会見。サイト利用者や広告主ら関係者は、これを見て納得するのだろうか。(文・横田 泉)