2度目の人的補償は2001年だ。オリックスから近鉄に移った加藤伸一投手の補償で、ユウキ投手が移籍した(同年は他に中日から巨人FA移籍した前田幸長投手の補償で平松一宏投手もいた)。近鉄時代のユウキは4年間で通算7勝だったが、オリックス移籍初年度となった02年は先発で7連勝するなど7勝1敗。同年のオリックスでは勝ち頭となった。一方、前年11勝の加藤は0勝に終わった。このような例は06、07年の門倉健投手(横浜で10勝→巨人で1勝)と工藤公康投手(巨人で3勝→横浜で7勝)にも当てはまる。補償選手の潜在能力をうまく引き出せば、このような逆転現象は十分ありうる。

 野手では、石井一久投手(ヤクルト西武)の補償となった福地寿樹外野手が花開いた。07年に西武で87安打、28盗塁だったが、08年はヤクルトで自己最多の155安打、42盗塁。プロ15年目で初タイトルとなる盗塁王を獲得した。打率もリーグ6位の.320と大ブレーク。翌年も42盗塁で2年連続盗塁王に輝いた。石井も9勝(10敗)から11勝(10敗)と白星を増やしており、こちらはWIN―WINの移籍となっている。

 近年でも、巨人から広島に移った一岡竜司投手(大竹寛投手の補償)が、2年間通算0勝0敗0セーブ0ホールドから、14年に2勝0敗2セーブ16ホールドと活躍した。人的補償で、編成担当の目利きが試される。(文=日刊スポーツ・斎藤直樹)