こうした外国人騎手の活躍を受け、JRAでは通年騎乗が可能な移籍制度を導入。ともにジャパンカップ制覇の経験もあるミルコ・デムーロ騎手(イタリア)とクリストフ・ルメール騎手(フランス)が難関試験を突破し、2015年3月からJRA所属となった。すると、デムーロ騎手は4月の皐月賞、5月のダービーでいきなり2冠制覇。ルメール騎手も今年の皐月賞で3着、ダービーでは僅差の2着、そして菊花賞を制して牡馬クラシック3冠の中心を担うなど、移籍から先週(11月20日)までの約1年半の間に、両者で中央競馬のG1レースを11勝(期間中のG1は計38レース)と猛威を振るっている。

 現在も短期免許を取得して現役世界ナンバー1の呼び声も高いライアン・ムーア騎手(イギリス)が来日中。先日の天皇賞・秋を快勝したほか、昨年のジャパンカップでも7番人気の伏兵ラストインパクトを2着に導くなど、日本の競馬ファンもその手腕をすっかり頼みとするところで、今年もリアルスティールとのコンビでジャパンカップに参戦を予定している。また、ルメール騎手はレインボーライン、デムーロ騎手もサウンズオブアースに騎乗予定。日本人騎手の代表はやはり武豊騎手で、北島三郎オーナーの天皇賞馬キタサンブラックを駆って意地を見せる。

 JRAでは2017年より一定の成績水準を要求するなど、短期騎手免許の制度を一部見直す方針を示しており、これによって来日する外国人騎手が減少することも予想される。競馬界は「も杓子も外国人騎手」のような状態に陥っていた面もあり、見過ごされていた日本人騎手の再評価につながるのなら喜ばしい。来年は日本人騎手の奮起も試される。

 ただ、競争相手が減ったと侮るだけなら、世界的騎手の寡占化がますます進み、日本人騎手との差は縮まるどころか開くことになるだろう。制度の見直しによって世界の一流と日本人騎手が真に切磋琢磨する環境が整い、「世界に通用する巧い騎手作り」につながることを望みたい。(文・渡部浩明)