2015年3月にJRA移籍を果たしたデムーロ騎手(左)とルメール騎手(右)(写真:Getty Images)
2015年3月にJRA移籍を果たしたデムーロ騎手(左)とルメール騎手(右)(写真:Getty Images)

 11月27 日(日)、府中市の東京競馬場でジャパンカップが開催される。ジャパンカップは「世界に通用する強い馬作り」を目指して1981年に創設された中央競馬の“元祖・国際レース”で、36回目を迎える今年はドイツから2頭、フランスから1頭が参戦表明。日本の精鋭たちと国内最高の1着賞金3億円(賞金総額6億4800万円)を賭けて争う。

 そのスローガンからも察しがつくように、ジャパンカップ創設当初の日本は世界の競馬後進国。お世辞にも一流とはいえない諸外国からの遠征馬に、現役最強クラスが一蹴されるような状態が続いた。しかし、バブル経済を追い風に有望種牡馬や繁殖牝馬の輸入が促進し、日本産サラブレッドの質も飛躍的に向上していくことになる。

 それはジャパンカップの戦績にも顕著に表れている。日本馬は創設からの17回で5勝12敗と大きく負け越していたが、1998年以降は16勝2敗、目下10連勝中と外国馬を寄せ付けていない。近年は日本馬が強すぎるあまり、外国の一流馬が来日をためらうようになってしまい、当初の目標を達成できた一方で、レースの存在意義を問われる皮肉な事態に見舞われている。

 また、国際的評価の高まりは人の交流も促すことにつながり、もうひとつの課題が露見した。馬と共に競馬には欠かせない、騎手の実力がそれである。

 JRAでは1994年、1年間で3か月を上限とする「短期騎手免許」の制度を設け、外国人騎手に継続騎乗の門戸を開いた。JRAの賞金は世界最高水準にあり、これを契機として世界中の騎手が出稼ぎ来日するようになった。その卓越した手綱さばきと執念で勝利を量産する姿は競馬ファンへの訴求力も抜群で、いつしか「外国人騎手から買っておけば馬券は当たる」という共通認識のようなものが広まったほどだ。

 もちろん、外国人騎手ならだれでも勝ちまくれる訳ではなく、該当するのは騎手界のスーパースター級。プロ野球やJリーグのチームに、海外名門クラブのレギュラークラスが切れ目なく加入したら? 日本の競馬界には、現実にそのレベルの騎手が騎乗しにきている。しかも、ビッグレースほど活躍するものだからインパクトも絶大。くすぶっていた馬が外国人騎手への乗り替わりで一変するケースも珍しくもなく、日本人騎手の存在感はどうしても薄くなりがちだ。

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