4試合で35得点を奪った打線についても課題が残る。毎試合打順を入れ替える中で分かったことは、「鈴木誠也が使える」、「秋山が好調」、「山田が不調」、「坂本は外せない」、そして「大谷がすごい」といったところ。だがこれはあくまで11月13日を終えた時点でのことだ。11月14日にWBCが開幕したのであれば、選手の調子は把握できたのは大きいが、実際のWBC初戦は3月7日である。4カ月後の選手のコンディションは未知数であり、大切なのは、大会が進む中で選手の調子を見極める“目”と指揮官の“決断力”にある。

 その意味で、この時点で「4番・中田」、「5番・筒香」を固定する意味はなかっただろう。むしろ有事の際を想定し、この4試合の中で他のメンバーにも“侍ジャパンの4番”を経験させておくべきだった。振り返ると、『プレミア12』での唯一とも言えた収穫は「新4番・筒香の誕生」だったはずだ。その流れを断ち切ってまで「4番・中田」に執着することが、果たして正しいのか。自身の現役時代と重ね合わせる中で「4番=右の大砲」の理想を追い求めたい気持ちは分かるが、勝利が求められるWBC本番では、その“美学”を捨てることも必要になるだろう。

 今後、メジャーリーガーの招集も視野に入れながら28人のメンバー選考に入る小久保ジャパン。投打に豊富な駒が揃って選手選考が悩ましいところだが、その選手たちを率いる監督を選ぶことはできない。「世界一奪還」へのタクトは小久保監督に託すしかないのだ。まずは罵声を浴びせたファンを含めた多くの人々の信頼を取り戻すこと。その信頼は、勝つことでしか得られない。最大の正念場はおそらく準決勝以降に訪れるだろう。それまでに監督力を高めることが、侍ジャパンの何よりの強化になる。