また「ハニカミ王子」としてスターダムにのし上がった石川以上に注目を集める男子ゴルファーが国内にいないのも事実で、2人がこの大会で活躍すれば、メディアの扱いも想像を越えたものになるはず。WGCシリーズで優勝し、メジャー制覇まであと一歩に迫った世界ランク6位の松山と、国民が注目していた石川のペアが世界一になることが、日本のゴルフの盛り上がりに一役買えると考えているからではないだろうか。

 戦略的な要素もあるだろう。今大会はフォアボールとフォアサムのフォーマットをそれぞれ2ラウンドする。日本のトーナメントでは馴染みが薄いが、松山と石川は同様の試合形式で開催されるプレジデンツカップに出場済みで、ダブルスでの戦い方を経験している。フォアサムでは2人が同じボールでプレーしなければならないし、ストローク戦のような個人だけを考えたラウンドは難しくなる。パートナーの長所などを考慮しながらのゴルフが求められるだけに、ダブルス経験がある2人が組むことは合点が行くわけだ。

 そんな日本代表タッグの前に立ちはだかるのは、世界ランク7位のアダム・スコットとマーク・リーシュマンが組むオーストラリアと、リッキー・ファウラー&ジミー・ウォーカーの米国代表、グレーム・マクドウェル率いるアイルランドあたりが強豪国と言える程度で、頭一つ抜けるような優勝候補は不在。同ランクのトップ5が参戦をスキップし、出場選手の最上位が6位の松山ということも、日本チームにとっては追い風になっている。

 しかも松山は、10月の日本オープンで優勝すると、PGAツアーのCIMBクラシックで単独2位、WGC-HMBCチャンピオンズで優勝、そして国内に戻った三井住友VISA太平洋マスターズでも7打差の独走Vと絶好調。世界レベルのショットの精度を誇る松山がピンに絡め、石川が沈める。そんなプレーができれば、14年ぶりの悲願も現実味を帯びてくるはずだ。松山と石川の、日本のゴルフ底上げを願った戦いは間もなくスタートする。(文・田村一人)