「テニスの差はなくなってきていると思うが、メンタル的なところだったり、大切なところでの集中力や駆け引きが、彼の方がまだ少し上だと思う」

 確実に近づきつつあるマリーの背を視野に捕らえた上で、両者を隔てたものを錦織は冷静に見つめていた。

 このマリー戦の結果により、グループ戦での錦織の成績は1勝1敗に。マリーは2勝で頭一つ抜けだし、スタン・ワウリンカが1勝1敗、マリン・チリッチは2敗となった。運命の第3戦は、錦織対チリッチ、そしてマリー対ワウリンカの組み合わせ。現時点ではどの選手にも、準決勝進出の可能性が残される。ただしマリーがワウリンカに勝てば、その時点でその後に行われる錦織戦の結果を待たずしてマリーの1位、錦織の2位が確定。またマリー対ワウリンカの結果を問わず、錦織はチリッチに勝てばグループリーグ突破を決める。

 そのチリッチ戦に向け、錦織は「自信を持ってプレーすること」を一番に心掛けたいと言う。「体力的にはそんなに問題ない」との言葉も、頼もしく響く。

 「1試合目より自分のテニスは良くなっている。しっかりプレーできれば、勝つチャンスは全然ある」

 マリーとの激闘を単なる善戦で終わらせないためにも、まずは身体を回復させるとともに気持ちをリフレッシュし、次なる戦いへと錦織は視線を向ける。(文・内田暁)