スーパームーンはあまり「スーパー」ではない、ということか。このようにスーパームーンの貴重さが過度に強調される背景には、話題づくりをしたいというマスコミの姿勢もあるだろう。それが人々の生活に彩りを添えることがあるのも事実だが、誤解が生じるのであれば、是正されてしかるべきだ。

 またもうひとつ、スーパームーンについて意外な事実がある。スーパームーンには明確な定義が存在しないのだ。国立天文台の広報担当者はこう説明する。

「NASAは数年前からスーパームーンという言葉を使い始めているようですが、この言葉は天文学の正式な用語ではなく、国立天文台も使用していません。これが問題になるのが『次のスーパームーンはいつか』という話になったとき。今年は35万6520.2㎞まで接近した満月がスーパームーンと呼ばれていますが、どの程度近くなったらスーパームーンと呼ぶかという基準がないため、次のスーパームーンがいつか答えることができないのです」

 スーパームーンを楽しみにしていた人には水を差す結果になったかもしれない。だが、担当者はこうも語る。

「十五夜をはじめ、日本人には古くから満月を眺める風習がありました。しかしこの忙しい現代、特に若い人たちの間では落ち着いて月をめでる機会が少なくなっています。スーパームーンを巡る表現には是非がありますが、理由はどうあれ、多くの人が月を眺める呼び水になるのは素晴らしいことだと考えています」

 次のスーパームーンがいつであるかを答えることができないが、今年11月14日よりも満月が地球に接近するのは18年後の2034年11月24日。やはり貴重であることにかわりはないので、秋の月見に興じてみてはいかがだろうか。(ライター・小神野真弘)