一方の新顔では、リオ五輪代表だったMF井手口陽介(ガンバ大阪)、リオ五輪はクラブの事情で逃したFW久保裕也(ヤングボーイズ)、ドイツで主力としてプレーするFW大迫勇也(ケルン)の3人が入った。

 中でも、初のフル代表メンバー入りとなった井手口は、ハリルホジッチ待望のMFと言われる。タイプ的には山口に近いか。積極的にデュエル(1対1)を挑み、局面で勝つことを全体の勝利につなげる。プレーを作る力は低いが、指揮官は中盤を防御線、もしくは守備から攻撃へのトランジション地帯と位置づけ、井手口は好みと言えるだろう。

 ハリルホジッチは「選ぶ選手がいない」と不満をぶつけたことがあった。それはリーダーとして幼稚だった。しかし、徹底的に自身の価値観で選手を選択してきたのも事実。そのおかげで、ぼんやりとプレーモデルは見えてきた。

 もっとも、「それで世界と渡り合えるのか」のメドはまだついてはいない。また、「そのスタイルは日本人に合うのか」となると、まだ疑問が拭えない。やはり、W杯予選のサウジアラビア戦は周囲を納得させるような結果が必要になる。FW本田圭佑(ミラン)、MF香川真司(ドルトムント)、岡崎慎司(レスター)らが所属クラブで出場機会が乏しいままなのは懸案事項だろうが、もはや釈明は受け入れられない。

 「負ければ解任は確実」と言われるなか、ハリルホジッチは「子飼い」選手を中心に、決戦へ挑む。(文=スポーツライター・小宮良之)