日本の原子力発電所(原発)が曲がり角に立たされている。地元の県知事から運転停止を求められたり、裁判所の決定で運転停止に追い込まれたり。東京電力福島第一原発事故をきっかけに高まった原発への不安が、社会に変化をもたらした。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞編集委員・上田俊英さんの解説を紹介しよう。

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 9月14日の鹿児島県議会。三反園訓(みたぞのさとし)知事は施政方針演説で、こう述べた。

「私は原発に頼らない社会をつくってまいりたい」

 同県の薩摩川内市には九州電力(九電)川内原発1、2号機がある。福島第一原発事故を受けて、国内の全原発が運転停止に追い込まれたなか、昨年、最初に再稼働にこぎつけた。原発がある地元の知事が「脱原発依存」の方針をこれほど明確に打ち出すのは、大事故に遭った福島県以外では初めてだ。

 三反園氏は7月の同県知事選挙に立候補。4月の熊本地震で「県民の原発への不安が高まっている」などとして、川内原発を一時停止して安全性を再点検することや、避難計画を見直すことを公約に盛り込み、初当選した。

 知事就任後は九電に対して2度にわたり、川内原発をただちに止めて安全性を再検証するよう要請した。知事は法律で、県民の「生命、身体及び財産を災害から保護する」計画を立てて実施する重責を負っているから、当然だろう。

 それでも運転を続ける九電に対して、三反園知事は今後、専門家らの委員会を設置するなど、県が独自に原発の安全性を確かめるしくみをつくる方針だ。

 原発にとってもうひとつの「逆風」は、裁判だ。

 8月12日、愛媛県伊方町にある四国電力伊方原発3号機が再稼働した。これに対して、再稼働に反対する住民は、松山(愛媛県)、広島(広島県)、大分(大分県)の各地方裁判所(地裁)に運転停止の仮処分を申請している。いずれかの地裁で住民が勝訴すれば、3号機は運転停止に追い込まれる。

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AERA dot.編集部
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