大谷翔平が全米でフィーバーを巻き起こす日は確実に迫っている(C)朝日新聞社
大谷翔平が全米でフィーバーを巻き起こす日は確実に迫っている(C)朝日新聞社

「日本を拠点にしている私の仲間の多くは、大谷翔平はダルビッシュに勝るとも劣らないピッチャーだと言っている。同年齢だったときのダルビッシュと大谷を比較したら、大谷の方が上だと話す人間を何人も知っている。次の日本産“スペシャル・プレーヤー”を挙げるとすれば、候補は彼になるだろう」

 2014年夏のこと――。メジャー某チームの大ベテランスカウトに日本人選手に関して意見を求めた際、大谷翔平のことをそう語っていた。あれから2年が過ぎ、日本の至宝はさらに確実に成長していることは間違いない。

 今季は投手、打者の両方で素晴らしい成績を残し、北海道日本ハムファイターズの日本一に大きく貢献。クライマックスシリーズで投げた165kmの快速球は、アメリカでも一部の熱心なファンから関心を呼んだ。“世界最高の若手ピッチャー”といった刺激的な形容で大谷を紹介する米メディアもあった。

「日本にもベーブ・ルースみたいな選手がいるんだろう?」

 つい先日、ある取材現場において、筆者もアメリカ人記者にそう声をかけられたこともあった。若き日には投手としても活躍した米野球史上最強のヒーローの名前が引き合いに出されるのだから、その話題性が知れるというもの。米国内のある有名雑誌も、来春のタイミングで大谷の特集を考えているという。

 もっとも、米球界がまだ見ぬ怪物の話題で持ちきりかと言えば、決してそんなことはない。CBSスポーツが掲載した大谷の記事は日本でも盛んに翻訳して伝えられたが、著名媒体の長文ストーリーはそれと6月にスタートした新サイト「The Ringer」に載ったものくらい。前述した某雑誌の企画にしても、発案した記者は大谷をまったく知らなかった編集者にどんな選手かを詳しく説明しなければならなかったという。

 11月に入った時点で、MLBのシーズンはまだ終わっていない。日本からメジャーにやってくる鳴り物入りの怪物はもう珍しくない。何より、事情をある程度知る者の間で、ポスティングシステムを通じて大谷が渡米してくるのは2018年以降だと考えられている。そんな背景から、メジャーリーグが“オオタニ”で盛り上がるのにはまだ少し早すぎるのだろう。

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