「今、カレイを中心に見ているのは、この時期カレイがおいしいからです。魚の肉まわり(肉付き)と(魚の)状態を見ています。肉付きのいいのがおいしいですから、それを選びます。それを、探すんです。(魚の状態は)触らないとわからないんですよ。(船から魚を陸揚げした)浜で5~6日活かしておくこともあったりします。(魚が)とれて2日ぐらいがベスト」

 水槽のまわりには、締められた魚も少し置かれていた。活け場なのに、なぜ締めた魚も並んでいるのか。

「水槽で泳ぎ回って、くたびれて死んじゃう魚もいるんですよ。そういう場合は、死んじゃう前に締めることもあります。ワラサやヒラマサなんかは泳ぎ回る魚なので、早めに絞めたほうが、いい状態で出荷できるので」

 事前に入った注文に照らし合わせながら、その日の最高の魚を探しながら、中西さんは活け場のザルに入った魚を、入念に品定めしていた。品定めに時間がかかるため、時間をかけてでもいい魚を選ぶため、セリの始まる2時間も前から、中西さんたちは活け場に入っていたのだった。

 それにしても、見極めるべき魚の種類も数も多い。セリに挑む下調べも大変な工程だとの感想を話すと、ひと呼吸おいて中西さんはこう話してくれた。

「これでも魚の入荷量は減ったんですよ。昔は、今の5倍はありましたから。でも以前は、(例えばカレイならば)10枚のうち4枚はいいのがあった。今は100枚あって1枚ぐらい。ましてやセリだから、そのいい1枚1枚をすべて取れる(せり落せる)わけではない。だから、とにかく触るんです。いいものを探すんです」

「いい1枚」を追い求めるのは、中西さんだけではない。活け場には、中西さん同様、活け場で魚を見極め続ける30~40名ほどの仲買人(仲卸で働く人のこと)がいた。仲買人同士は常に火花をちらし合う激しいライバル関係にあるものなのだろうと想像したが、中西さんに同行していると、そんな関係ではないこともわかった。おはようと声をかけ、この日の入荷状況や注文の入りぐあい、時には魚となんの関係もない冗談などの言葉をかけあっている。

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