先発10人を入れ替えたベトナム戦では、チームが共有する確かなスタンダードを証明した。攻守にバランスが取れ、勝利のためにビジョンを共有できるチームを“完成”させた内山監督の手腕は好評価に値するが、世界で戦うことを視野に入れれば現時点ではスタンダードの不足が否めない。つまり、そのままチームを熟成させるのではなく、攻守の戦力を底上げしたところにチームの再融合をはかる必要がある。

「もっとボールロストを少なくして、僕たちの時間を長くする試合展開をすること。あとは確実にアタッキングサードの課題は増えると思います」

 そう語るキャプテンの坂井だが、現状のチームでそのまま世界に挑めば、キャプテンが想定する課題に直面するところまでもいけないのではないか。昨秋に行われたU-19アジア選手権の予選から半数近い選手が入れ替わった経緯もある。特に18~20歳という年代は半年間で成長する選手と停滞する選手の差が激しい。特にクラブで主力になれるかどうかが成長に大きく影響する。

 内山監督は基本コンセプトを継続しながら、ここから現在のメンバーも含めてふるいにかけ、7カ月後にベスト布陣を作り上げることをイメージしているはず。当然ながら、その過程で新たに入ってくる選手や復帰する選手、そして外れる選手もいるだろう。10年ぶりに世界への扉を開いた今回のメンバーを祝福すると同時に、ここから世界の舞台に立つメンバーを目指す競争はすでに始まっている。(文・河治良幸)