始まりは、2013年の夏。「島で年間を通じて取れるウニを広められないか」と考えた藤見さんらスタッフは、ウニを使った名物メニューの開発に取り組み始めた。いったん板に載せてみたが、おいしくてもパンチに欠ける。ウニ鍋など試行錯誤を重ねてたどり着いたのが、しゃぶしゃぶだ。

 だが、しゃぶしゃぶするウニスープの開発に苦労した。最初は生ウニのスープを作ってみたが、「香りが磯くさくておいしくなかった」(藤見さん)という。なんとかウニのコクや甘さをうまく出せないか。ウニのにおいが立ち込める中、材料の配合や火の入れ具合などを変えて試作を繰り返し、ウニ好きのスタッフを集めては試食してもらった。そうして完成したのが、現在のウニスープだ。

 13年冬からレストランで提供し始めたが、当初はあまり売れなかったという。転機が訪れたのは、翌年の春。「そろそろやめようか」という話も出る中、テレビや雑誌などのメディアに取り上げられる頻度が増え、うにしゃぶ目当ての人が訪れるようになったのだ。

 レストランは大鳴門橋記念館の2階にあるのだが、現在、週末になると、40~50組待ちは当たり前、1階の階段下まで行列ができるという。うにしゃぶは、1日で150食出ることもあるそうだ。シーズンごとに訪れるリピーターもいる。

 ふと周りを見渡すと、平日のお昼前だというのに、既に客が数組入っていた。そして、ほとんどがうにしゃぶを食べていた。姫路から訪れたというカップルは初体験。40代の男性は「濃厚でコクがあって甘い」とうなり、20代の女性は「想像以上においしかった」とやや興奮した様子だった。

 藤見さんは言う。「淡路島の食材で何ができるかをいつも考えている。生産者の思いもきちんと伝えたい」。訪れる人が増え、慌ただしい中でも食材を探し、生産者に話を聞きに行く。うにしゃぶは、島を愛するさまざまな人たちの思いも詰まった、なんともぜいたくな逸品だった。

 なお、入荷状況は天候により左右され、16年12月は大鳴門橋記念館が、メンテナンスのため休館する可能性もあるという。できれば事前に問い合わせをして、堪能してほしい。(ライター・南文枝)