そのアルマグロに勝ったとして、2回戦から先の“対戦相手予想”をすることは、あまり意味がないだろう。錦織本人も「ドローは見ない」と常々公言しているし、ランキング上位の選手が必ずしも勝ち上がる訳でないことは、過去の多くの大会が証明している。ただあえて、錦織と同じドローの山に居る注目選手をあげるとすれば、センス溢れるオールラウンダーのダビド・ゴファン(第5シード)や、2年前の全米オープン優勝者にして今年8月のシンシナティ・マスターズ優勝者でもあるマリン・チリッチ(第4シード)が、実績面でも頭一つ抜け出すだろう。ケガのためランキングこそ落としてこそいるが、1年前にはトップ10にいたビッグサーバーのケビン・アンダーソンも気になる存在だ。

 今大会には、錦織のほか3名の日本人選手が出場する。第5シードのゴファンと初戦で対戦する西岡良仁は、日本のみならず世界的にも注目の若手選手。170センチと小柄だが、鋭いスピンをかけあらゆるコースに打ち込まれる左腕のフォアと、直線的にコートに刺さるバックで高次に構築されるストローク戦は、まるでチェスのような緻密さを誇る。先のデビスカップ(国別対抗戦)で日本を勝利に導く貴重な勝利を手にしたことでも分かるように、大舞台でこそ輝くのも、この小柄なファイターの魅力である。

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