市街地に住むことが多いアブラコウモリはもっとも身近な隣人。コースターと比較するとその小ささは一目瞭然
市街地に住むことが多いアブラコウモリはもっとも身近な隣人。コースターと比較するとその小ささは一目瞭然
本郷通りでバットディテクターから出る音をキャッチ、見上げた先に飛んでいるアブラコウモリに興奮する参加者たち
本郷通りでバットディテクターから出る音をキャッチ、見上げた先に飛んでいるアブラコウモリに興奮する参加者たち
子どもたちが作ったバットボックス。入口は下向きで、複数のコウモリの入居や天候や気温で使い分けができるように2つの部屋がある。
子どもたちが作ったバットボックス。入口は下向きで、複数のコウモリの入居や天候や気温で使い分けができるように2つの部屋がある。
子どもたちが作ったバットボックスは9月に管理者である東京都公園協会の協力を得て、日比谷公園に取り付けられた</p>

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子どもたちが作ったバットボックスは9月に管理者である東京都公園協会の協力を得て、日比谷公園に取り付けられた

 夕暮れ時にふと空を見上げてみてほしい。鳥が右往左往して飛んでいる……。しかしよく見ると飛び方がどうも変?! 急に反転したり、羽ばたかずスイーっと横切ったりと鳥にしては変則的だ。

 その正体はコウモリ。「まさか、ここは大都会のど真ん中ですよ」という声が聞こえてきそうだが、コウモリ、特に日本で多く見られるアブラコウモリはニューヨークのビル街に巣を作るハヤブサのごとく、ビルのすき間を利用してねぐらを作り、昼間は眠り夕方になると飛び出して食餌にいそしむのだ。ビル街だけではなく、コウモリは住宅街にもいる。人家の屋根裏やシャッター内、エアコン室外機のパイプ内にもねぐらを作ることが多く、人間のすぐ隣にいる身近な生きものなのである。

試しに日没前後に、空を見上げてみてほしい。日比谷公園や代々木公園、皇居周辺や神田川、隅田川沿いなど公園レベルの木々と水辺があれば彼らは飛んでいるはずだ。なぜなら、都会で見られるアブラコウモリという小型のコウモリは、川の畔や公園などにたくさんいるユスリカや蚊などを食べているからだ。

 アブラコウモリは体長約5cm、体重は7g程度の小さなコウモリなのに、一晩に一頭あたり500匹余りの虫を捕食するというからスゴい。(暗くなっても虫を捕らえられるのは、口や鼻から超音波を発し、ものにあたって跳ね返ってきた音を捉えて対象物の位置を知る「エコロケーションシステム」を使っているからだ)。

しかも集団で行動するから毎晩相当な数の虫を食べているはずで、この働きを期待して、海外では除虫のために庭にバットボックス(鳥の巣箱のコウモリ版)を設置する家もある。共同通信が配信した記事によれば、アメリカ南部ではジカ熱を媒介する蚊の駆除を期待して自宅にバットボックスを設置する人が急増し、テキサス州のあるメーカーでは販売数が昨年に比べ68%アップしたという。

 もちろんそれだけではなく、単純に小鳥を観察するようにコウモリを愛好して観察するためにバットボックスを作る人も多いとか。よく見るとコウモリは意外にかわいい顔をしている。

 そんなコウモリを「身近な隣人」として見直し、生態観察を楽しむ催しが8月に駿河台で行われた。これはCSRの一環として、本社ビルがある駿河台で緑地づくりや地域に開かれた環境コミュニケーションスペースづくりに取り組む三井住友海上火災保険株式会社(以下三井住友海上)と(公財)日本自然保護協会(以下NACS-J)が1年を通し「駿河台生きものさがし自然塾」の第1回目だ。内容は「バットウオッチングとバットボックスづくり」。

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