そんな状況で、岡崎の2得点は生まれた。優先順位の落ちるリーグ杯だったとはいえ、先発に復帰した試合で2ゴールを挙げた意義は、やはり大きいだろう。岡崎の得点は、昨季終盤の3月に行われたニューカッスル戦で決めたオーバーヘッド弾から実に6カ月ぶりのことで、本人もこのゴールの重要性を語る。

「自分に対するラニエリ監督の見方が変わるとは思わないけど、ラッキーボーイみたいに、『今、当たっているな』と思ってもらえるだけでも全然違う。だって、今までは(スピードや高さなど突出した武器がないため)控えに置いておくのも厳しいように思われていたから。先発か、ベンチ外か。そういう立場に置かれていたと思う。でも今日の2ゴールで、『点をとり始めているし、ベンチに置いて途中から出しても良いな』と思わせられたら、次の出場チャンスにつながる。長い間ゴールをとっていなかったから、自分にとって大事なゴールです」

 その一方で、得点に浮かれすぎることもない。久しぶりのゴールに安堵(あんど)していたが、手放しで喜ぶことはなかった。「海外のクラブで、いつも毎回(試合に)出られる力は、今はないと思う。昨季は運良くチームにフィットした」と、自分の力と立ち位置を分析する。その上で、「ポジティブな危機感」という独特の表現を用いて、厳しいレギュラー争いに挑む現在の心境を明かした。

「危機感というのはいろいろあると思うんですけど、自分の場合はポジティブな危機感で。危機感がないと前に進む力が出ない。だから長い目で見たら、(今の状況も)浮上のきっかけになった。こうやって焦ったから2ゴールが生まれたと思うし。やはりその立場にならないと本当の底力は出ない。今日は、それがたまたまゴールにつながった。これをきっかけにしたい。試合に出られない状況というのは、いつでも、誰にでも起きることだと思います。だから、スリマニやバーディーの調子が出ない時のために、『自分がいる』ことをプレーで見せていかなければ」

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