乾いた破裂音が鳴り響いたその刹那、ボールは相手コートに突き刺さり、誰のラケットにも触れることなくベースライン後方のフェンスに跳ね返る……。
瞬きも許さぬそのスピードに、観客席から沸き起こる感嘆の声。続いて、サーブ速度計に表示される時速125マイル(約201キロ)の数字に、再び驚きの声が上がる――。
大坂なおみがコートに立つ時、それは見慣れた景色になりつつある。周囲の喧騒をよそに一人表情を崩さぬ180センチの彼女が、鋭く振り抜く右腕でさらにポイントを奪い取り、勝者として名乗りを受けるのも今やよく見る光景だ。
今季初めてグランドスラム本戦の大舞台を経験した大坂は、3大会連続で3回戦進出。濃密なる6試合で勝者として名を呼ばれた。
世界ランキング127位で迎えた1月の全豪オープンでは、予選3試合全てをストレート勝利で勝ち上がり、本戦でも2つの白星を連ねて3回戦へ。初めて“トップ100ランカー”として予選免除で出場した5月の全仏オープンでも、やはり2勝を挙げて3回戦に到達。ウィンブルドンは膝の故障のために欠場したが、先日の全米オープンでも三たび3回戦の舞台へ。しかも、いずれの大会でも3回戦に到るその過程で、シード選手を破る金星を手にしている。