2035年までのロードマップ(厚生労働省「保健医療2035」をもとに作成)
2035年までのロードマップ(厚生労働省「保健医療2035」をもとに作成)
これからの医師に必要なこと(渋谷教授と尾藤医長の話をもとに作成)
これからの医師に必要なこと(渋谷教授と尾藤医長の話をもとに作成)

 現在、医学部を目指すみなさんが働き盛りの医師になっているのが2035年だ。そのころの医療や医師は、今とは全く異なった姿になっているだろう。今後、医師と人工知能(AI)が協働していく中で、医療システムはどのように変わっていくのだろうか? これからの医療のあり方を、週刊朝日ムック「医学部に入る2017」で探った。

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 厚生労働省は昨年、2035年の日本の医療システムのビジョンとそれまでのロードマップを示した「保健医療2035」を作成した。

 たとえば、17年に医学部に入学し、23年に卒業して医師になると、35年には中堅の働き盛りの医師になっているだろう。

「保健医療2035」を作成する会議の座長を務めた東京大学大学院医学系研究科の渋谷健司教授は、「2035年の日本の医療は、今とは激変している」と指摘し、こうも言う。

「大きな変化は3点。ひとつは、テクノロジーです。人工知能を含めて日常の医療のやり方が変わります。もうひとつは、医師の役割が医療という枠組みから、社会の中に拡大していきます。最後に、グローバル化。国内外問わず活躍する医師が求められます。日本の医療はこれまで50年以上公的制度の枠組みの中で規定されてきましたが、それが大きく変わります」

 医師の仕事というと、病院や診療所での診療をイメージするだろう。一方、これからの医師の仕事の場は介護施設、在宅医療とより地域に広がっていくという。

 病院中心の医療から地域へ拡がっていく動きは、すでに始まっている。団塊の世代が75歳以上になる25年に向けて、在宅医療や介護などを住み慣れた地域で受ける医療体制である「地域包括ケアシステム」の整備を厚労省は進めている。また、病院は、25年には「高度急性期」「一般急性期」「長期療養」などと機能ごとに分けられ、介護施設や在宅サービスなどと連携を図っていくことが求められている。

 それに伴い、医療保険制度も変わってくるだろうと、野村総合研究所ヘルスケア担当部長の山田謙次さんは指摘する。

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