ここまで並べれば、これはもう単なる偶然ではあるまい。ヤンキースの日本人エースは、打者有利の球場が多いア・リーグ東地区でもコンスタントにチームを勝利に近づけることができている。日本語では“持っている”と一言で片付けられそうだが、実際には田中はどうしてメジャーでも“勝利の使者”であり続けられているのだろうか。

「多くのストライクを狙ったところに投げられる。そしてスプリッターが素晴らしい。これまでテレビでずっと見ていた通りのピッチャーだ」

 8月上旬のメジャー昇格以降、23試合で11本塁打を放って注目を集めているゲーリー・サンチェス捕手はそんなシンプルな言葉で田中の良さを表現していた。

 実際に8月の田中は5登板でわずか1四球のみ。メジャーでもストライクゾーンの中で勝負できるという自信がついてきているのだろうか。安定して勝ち星を重ねられる背景に、この抜群の制球力があることは間違いあるまい。

 また、9月5日のブルージェイズ戦後には、サンチェスとジョー・ジラルディ監督は口々に田中の適応能力を賞賛していた。

「初回は少し厳しかったが、以降はスプリッターとカーブを使い始めて上手く適応してくれた。スライダーも徐々に良くなった」(サンチェス)

「(この日は)スライダーが良くなくて、初回は痛打された。ただ、もっとスプリッターに頼る必要があると気付き、適応してくれた。初回の後は落ち着いて、大きなアウトを奪ってくれた。ア・リーグ東地区で3点前後の防御率(3.11)ということは良い投球をしていることを意味する。多くのゲームで私たちに勝利のチャンスを与えてくれているよ」(ジラルディ監督)

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